SIG るーみっくわーるど SIG るーみっくわーるど」は、漫画家 高橋留美子先生(るーみっくわーるど)の作品が好きな仲間が集まっているグループです。 るーみっく好きなメンバー間コミュニケーションのためのチャットや掲示板の提供、るーみっく系イラスト・小説・リンク集の公開などを行っています。 オフ会も不定期に開催されています。1992年6月にPC-VAN上で誕生した歴史あるグループです。
ホーム | About | 新着・お知らせ | フォーラム | ライブラリ | チャット公開ログ | メンバー紹介 | リンク | Copyright
投稿日時:1993/ 9/30 15:18 投稿者ID:QKM33822
#1169/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QKM33822)  93/ 9/30  15:18  (125)
小説>らんま「気持ち美人」2 SAMWYN
★内容
  3.空の上の黄金色の林檎
「・・・な〜んか今日、みんな変」
クラムボンあかねと呼ばれることを除けばその日の学校は無事に終わった。その帰
り道、あかねはハ〜ッとため息をつきながらボソッとつぶやいた。
「おめーがあんまり素敵だったからだろ? 気にすんなよ、クラムボンあかね?」
乱馬はなおあかねがこうなってしまった原因を考えながら優しく微笑んで見せた。
おかげであかねはキュンとなりながら苦笑いすると言う器用なマネをしなくてはな
らなかった。
「・・・お願いだからせめてあんただけはその名で呼ばないでくれる?」
(素敵・・・か! ヘヘ、やっぱ思い切って髪染めて良かった!)
「・・・あかねさん!」
次の曲がり角を曲がったあかねたちは旅から戻って来たらしい良牙とバッタリ鉢合
わせしてしまった。もちろん、良牙は愕然と身を引いてあかねを見つめた。
「ど、どうしたんだ、そのか・・・」
「よっ、お帰りっ、良牙!」
乱馬はさりげなく良牙の肩を抱いてポンポン叩きながら後ろを向かせてコソッとさ
さやいた。
「昨日の夜からおかしーんだよ、あかねが。どーも、その・・・、イカレちまった
みてーなんだ。だから、な! 髪のことには触れねーでくんねーか?」
「・・・イカレた!? な、なぜ・・・?」
ギョッと聞く良牙に乱馬は首を振って見せた。
「・・・わかんねェ。もーしばらく様子見ねーと・・・!」
「あ〜! そっか〜、そーだったんだぁ!」
不意に後ろから聞こえたなびきの声に良牙と乱馬は思わずギョッと振り向いた。な
びきはニイッと笑って良牙のバンダナを指差した。
「あかねぇ、あんた、良牙くんに合わせたんでしょ!? どお? 図星?」
「・・・え!?」
あかねと乱馬と良牙はその言葉にギクッと凍りついた。ハッとしたあかねがあわて
て探るように後ろの良牙と乱馬に振り向いてごまかすように笑った。
「ヤっ・・・、ヤだっ、全っ然違うわよっ、なびきおねーちゃん! ね、そ、そん
なんじゃないから気にしないでね、良牙くん?」
しかし良牙は舞い上がっている最中だった。あかねはタラッと汗を流してその隣で
自分をにらんでいる乱馬をすがるように見つめた。
「・・・ち、違うから、ね? 乱馬?」
「・・・何で隠してた?」
あかねから目をそらした乱馬が吐き捨てるように聞いた。
「何で俺に本当のこと言わなかったんだよっ、ええっ!?」
ギッとにらむ乱馬をあかねは愕然と見つめるばかりだった。
「ほ、本当のことって・・・、だ、だから違うって・・・」
「俺・・・、本気で心配してたんだぞ!?」
悔しげにプイッと後ろを向いた乱馬は一言だけ言ってスタスタ歩き出した。
「けっ、アホらし! せいぜい仲良くやってな! 俺は先に帰るぜ」
「らっ・・・、乱馬っ!」
あかねは泣きそうな顔であわてて後を追おうとした。ハッと我に返った良牙はあわ
ててあかねを引き止めようとした。
「まっ、待ってくれ、あかねさんっ・・・」
「ゴメンねっ、良牙くん! あれ、おねーちゃんのウソだからっ!」
あかねは振り向いてすまなそうに手でバッテンを見せると、もう後も見ずに乱馬の
後を追い駆けて行った。
「・・・ウソ・・・なのか、貴様?」
良牙はまだ期待を残す顔でなびきをキッとにらみつけた。なびきはシレッと答える
ばかりだった。
「何よ、ウソじゃないわ。冗談よ、冗談!」

「乱馬! 待って、お願い! せめてわけぐらい聞いてっ!」
ズカズカ歩いていた乱馬はその言葉にピタッと背を向けたまま立ち止まった。
「・・・言えよ。気分転換なんかじゃねーんだろ、ほんとは?」
「そ、それは・・・ウソ・・・でした、ごめんなさい・・・」
ようやく追いついて乱馬へと手をのばしかけたあかねはその手をピクッと止めてす
まなそうにうつむいた。
「・・・早く言えよ。別になびきの言った通りでもかまわねーんだぜ、俺は」
乱馬は肩越しに振り向いてジトッとあかねをにらみつけた。あかねはあわててブン
ブン首を振った。
「ちっ、違う! 信じてっ、本当は昨日乱馬が・・・!」
そこまで言いかけてあかねはカアッと真っ赤になってしまった。
(ヤ、ヤだ・・・! こ、これって、あたしは乱馬が好きだってゆーのとほとんど
同じことじゃない・・・!)
「・・・言いたくねーなら無理すんなよ。じゃあな、あかね」
乱馬はフンとあかねをにらむとまたツカツカ早足で歩き出そうとした。
「待って!!」
ギクッと驚いてあわてて乱馬の腕を引き止めたあかねはもう泣きたい気持ちで恥ず
かしさをこらえて叫んだ。
「昨日乱馬が、テレビの金髪の子が可愛いって言ったからなのっ!!」
「・・・!」
呆然と顔を上げた乱馬はようやく昨日のマンボウを抱いた少女を思い出した。

「・・・おめーってつくづくマヌケなのな、あかね?」
向こうを向いたままボソッと言う乱馬の言葉にあかねの恥ずかしさはみるみる怒り
に変わって行った。
(・・・やめてやる! こんな奴の許婚なんてもーイヤよっ、あたし!)
「わかったわ! でも最後に一発殴らせて・・・!」
グッと拳を振り上げたあかねに乱馬はニッコリ微笑んで振り向いた。
「だってよ、マンボウの方だぜ、俺が可愛いって言ったのは?」
「・・・へ? マ、マンボウ・・・?」
あかねは本当に間の抜けた顔で乱馬を見つめるばかりだった。乱馬はクスクス笑い
ながら言った。
「それとも何か、おめー、今度はマンボウのヌイグルミでも着るつもりかよ?」
「・・・そ、それは、ちょっと・・・」
あかねは想像して見たがどう考えてもそれではただのバカだった。乱馬は安心しろ
と言うようにうなずいて見せた。
「それに、俺、別に容姿なんか気にしてねーぜ? 俺が好きなのは、心が美人な奴
さ!」
「・・・あ!」
あかねは何か急に恥ずかしくなってあわてて手で髪を隠した。乱馬はフッと笑って
髪をファサッと風になびかせながら空を見上げた。
「この青空みてーに大きくて澄み切ってて、雲が通ろうと通るまいと関係ねえ、っ
て感じ・・・かナ?」
「・・・空のよーな・・・人?」
あかねもつられて空を見上げた。ふとあかねは細かいことに夢中になっていた自分
がバカらしく思えて来るとともに、同じ空を見上げることで乱馬と1つになれるよ
うな気がして来た。あかねはニコッと微笑んでつぶやいた。
「・・・あたしも! そーゆー人好きだナ!」
「だろ? 第一よ、俺より美人でプロポーションのいー女なんてそーいるもんじゃ
ねーしな! んなこと言ったらおめーなんかハナから絶望的だもんな!」
ホッとして気が弛んだ乱馬はついワハハと笑って口をすべらせてしまった。
「だからおめーも早く粗暴なとこ直せよな、あかね! それぐれーなら何とかなん
だろ、いくらおめーでもよ!」
ポンポン肩を叩く乱馬にあかねはうつむいて肩をワナワナ震わせたのだった。
「・・・あんたって人はぁ〜っ!!」

  エピローグ
「・・・あら? どーしたの、乱馬くん? そんなとこで?」
少し後に同じ場所までやって来たなびきはズタボロになって電柱にぶら下がる乱馬
を不思議そうに見上げた。
「なびきぃ・・・。女心は秋の空って、あれ間違いだよなァ? そんな文句考えた
奴の顔見てみてーぜ・・・」
「・・・秋は台風の季節だからじゃない?」
そう言い残して立ち去ろうとしたなびきを乱馬は情けない声で呼び止めた。
「東風先生呼んで来て〜、なびき〜。全身脱臼で動けねーんだ、俺・・・」
「ま、すごい台風だったこと」
なびきはヒョイと肩をすくめてまた歩き出した。ヒョウと吹く風はさすがに夕暮れ
はいくらか寒く、乱馬がグシッと鼻をすすったのはあるいはクスンと泣いた音だっ
たのかも知れない。

【 気持ち美人 】終わる
前の投稿:#1168 小説>らんま「気持ち美人」1 SAMWYN
この投稿:#1169 小説>らんま「気持ち美人」2 SAMWYN
次の投稿:#1170 感想>今週のらんま              風祭

フォーラム過去ログ一覧へ戻る

Copyright © 1993-2005. SIG るーみっくわーるど
このページにある投稿文章は、各投稿者に著作権があります。
このサイトで公開されている全ての文章・画像などを許可なく転載することを禁じます。