SIG るーみっくわーるど SIG るーみっくわーるど」は、漫画家 高橋留美子先生(るーみっくわーるど)の作品が好きな仲間が集まっているグループです。 るーみっく好きなメンバー間コミュニケーションのためのチャットや掲示板の提供、るーみっく系イラスト・小説・リンク集の公開などを行っています。 オフ会も不定期に開催されています。1992年6月にPC-VAN上で誕生した歴史あるグループです。
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投稿日時:1993/ 9/30 15:15 投稿者ID:QKM33822
#1168/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QKM33822)  93/ 9/30  15:15  (174)
小説>らんま「気持ち美人」1 SAMWYN
★内容
【 気持ち美人 】                 小説 ”らんま1/2”

                                                  ID:QKM33822 SAMWYN

  プロローグ
「あたし・・・、可愛くないのかな〜・・・?」
あかねは自分の部屋で1人、神妙な顔で手鏡をジイッとのぞき込んでいた。少し前
に夕飯のオカズの取り合いからケンカになり、終わり際に乱馬の『可愛くねえ!』
3連発を食らったのだった(もちろん、あかねはテーブル殴りで怒りそのものは晴
らしたのだが)。
「チ〜ズ!」
ニッコリ微笑んだあかねはその顔を維持したまま右に左に顔を動かして見た。
「・・・可愛い・・・わよねぇ〜」
パタンと手鏡を置いたあかねは腕を組んで椅子にズンともたれかかった。
「な〜によっ、乱馬の奴っ! あいつ、きっと美的感覚が限りなくゼロに近いんだ
わっ、そーとしか考えられ・・・!」
その時、不意にあかねはもう1つの考えに行き当たった。
「あ・・・、あいつの美的感覚とあたしのがズレてる、としたら・・・? あいつ
にとっての『可愛い女』とあたしが全然ズレてる・・・としたら?」
(も、もしかして乱馬、本気であたしが可愛くないって・・・!)
蒼白な顔で思わず立ち上がってしまったあかねはハッと凍りついた。
「そっ、それがどーしたってゆーのよっ、フン!」
あわてて腕を組んでプイッと横を向いたあかねは、また不安そうに机の上の手鏡を
ジッと見つめた。
「・・・まあ、今後のこともあるし、い、一応確かめとかなくちゃね」

  1.あかね変身
「・・・何だよ、あかね?」
テレビのバラエティ番組を見ていた乱馬は向かいで真剣に乱馬を見守るあかねにウ
ンザリしたように振り向いた。あかねはジイッと乱馬の目線を追いながら手だけで
テレビをクイクイ差した。
「いーからっ、ほらっ、ちゃんとテレビ見ててよ!」
「・・・変なやつ〜」
乱馬はチェッと舌打ちしてテレビへと目を戻した。あかねはなお食い入るように乱
馬の目線を追いながら、乱馬の表情の変化とテレビの画面との関係を細かくチェッ
クしていた。
(どんな女に乱馬が反応するのか確かめなきゃ!)
不意に乱馬のマユがピクッと動き、乱馬の目は画面の1点に釘付けになった。
「・・・へっえ〜。可っ愛いな〜、こいつ!」
「!」
あかねはあわてて乱馬の視線を追ってバッと画面を見つめた。そこにはマンボウの
ヌイグルミを抱いた金髪碧眼の美少女が出ていた。歳はあかねと同じくらいだが、
髪は片側を赤玉付きゴムでまとめていた。
(あっ、あたしのセンスと全然違う・・・! や、やっぱり・・・!)
ガ〜ンとショックを受けたあかねは呆然自失のていでフラッと立ち上がるとそのま
ま気抜けしたようにヨロヨロ茶の間を出て行った。
「・・・何だ? やっぱあいつ変だぞ?」
いぶかしげにそれを見送った乱馬は、ま、いーか、と気を取り直して、嬉しそうに
パンパン手を叩いて画面を指差しながら後ろで見ていたかすみに振り向いた。
「ほらっ、かすみねーちゃん! あのマンボウすっげー可愛い! かすみねーちゃ
んに何か似てるぜ!」
「・・・まあ、良かったわね、乱馬くん? じゃあ今度、あのヌイグルミ買って来
てあげるわね?」
かすみはまったく動じずにウフフと微笑んで答えた。
「じゃ、おねーちゃん、あたしはシンバル叩く猿のおもちゃね!」
なびきが乱馬を指差しながら真顔でかすみに振り向いた。
「ん? こーか? こーか?」
歯ぐきをジ〜ジ〜見せる乱馬をクスクス笑いながらかすみは少し困ったように微笑
んだ。
「ダメよ、なびきはもうそんな歳じゃないでしょ?」

「門のところで待ってて、ですって」
次の日、非常に珍しいことに乱馬が朝食を食べる頃になってもあかねは起きて来な
かった。そこでなびきが起こしに行ったのだが、なびきは戻って来るなり調べるよ
うにジッと乱馬の顔をのぞき込みながら言った。
「・・・あんた、一体あかねに何言ったのよ?」
「・・・え? な、何って・・・?」
キョトンと聞き返す乱馬の背中をなびきは玄関の方へグイッと押しやった。
「ま、いーわ。とにかく門のとこで待ってなさい、すぐにわかるから」
「・・・?」
いぶかしがりながらも乱馬が門のところへ出ると、中で何やらドタバタと騒がしい
音がした。
「きゃあっ、あっ、あかね!」
「いーからっ、かすみおねーちゃん! このパンもらうわよ! 時間ないから今日
は朝食はいらないっ」
「・・・何やってんだ? お!」
すぐにガラッと玄関の戸が開いた。
「何してたんだよ、あかね? おめー、昨日から・・・う!?」
少し気遣うように笑って振り向いた乱馬はそのまま凍りついてしまった。そこには
髪を黄色に染めて片側を赤玉付きゴムでまとめたあかねが乱馬をにらむように立っ
ていた。
「なっ・・・、何よっ? き、気分転換って奴よ、似合うでしょっ!」
「あ・・・、あ、ああ、可愛いぜ、あかね。ハハ・・・」
乱馬はごまかすように苦笑いしながら手を振った。
(どっ、どーしちまったんだっ、一体!? こ、こいつ、昨日から変だったけど、
ついにイカレちまったのか!? と、とにかくここはヘタに刺激しねーよーに調子
合わせとくか・・・)
(乱馬、あまり嬉しそうじゃないナ・・・。やっぱり目も青くしないとダメだった
かしら・・・?)
ドキドキしながら乱馬の様子を探っていたあかねは少しガッカリしたが、すぐに気
を取り直すと乱馬の腕をグイッと引っ張って駆け出した。
(でも、『可愛い』って言ってくれたもんね! やっぱりこれが乱馬の趣味だった
んだわ!)
「ほらっ、早く行かないと遅刻しちゃうわよっ、乱馬!」

「あかねぇ、おはひいいっ!?」
登校中、走りながらあかねの肩をポンと叩いたクラスメートの女はあかねが振り向
いた途端シェーのポーズで飛び上がって驚いた。あわてて乱馬が自分のそばまで飛
んで来たその女生徒の耳にコソッとささやいた。
「あかね、可哀相に頭やられちまったみてーなんだ! ヘタに刺激して暴れられで
もしたら大変だから話合わせてやれよな? あ、それとおめー、一足先に行ってみ
んなに教えてやってくれ!」
「ん、おはよう! 何驚いてんのよ、美奈子?」
キョトンと見つめるあかねにヒクッと頬を引きつらせたその女生徒はハッとするや
否やデヘヘと笑って自分の頭をペンと叩いた。
「いや〜、これはこれはナウいセンスでゲスな、旦那! じゃ、あっしは急いでん
でこれで失礼させてもらいやさあっ!」
女生徒は鼻をクイッとこすると『て〜へんだ〜!』と叫びながら大慌てで駆け去っ
て行った。あかねは不審げにその背中を見送った。
「・・・美奈子、変」
(・・・おめーが変なんだぞ、あかね?)
乱馬はさすがに少し心配そうにあかねの横顔を見つめたのだった。

  2.黄金色の髪の乙女
「どーしたのかしら? 何か今日はみんなやけに優しいわね?」
あかねたちが教室へ入るとクラスメートたちは一瞬ギクッとしたが、誰もあえてあ
かねの髪のことは言わなかった。みんなおそるおそるあかねを見ながら、カバンを
持ってくれたり椅子を引いてくれたりしたので席に着いたあかねは不審そうに隣の
乱馬に聞いた。
「・・・今のおめーがさ、まるでエゲレス(イギリス)の王女様みてーだからだと
思うぜ、きっと」
乱馬は優しく微笑んで見せた。キュンとなってしまったあかねは恥ずかしそうにあ
わてて前を向いた。
「そっ・・・、そ〜かな〜、エヘヘヘ」
(可哀相に、あかね・・・。でも、一体何が原因なんだ? 昨夜ケンカした時は普
通だったのに・・・!)
「は〜い、みなさん席に着いてー」
そこへひな子が入って来た。ガラガラ席に着く音の中教壇に立ってトンと出席簿を
机で整えたひな子は何か言おうとしたままポカンと口を開けてあかねを見つめた。
(まずっ! 何か言い訳考えなきゃ・・・!)
乱馬がキッとひな子をにらむ間にもクッとうつむいたひな子は怒りの表情でバッと
顔を上げてあかねをグッと指差した。
「天道さん!! あなたまで不良になってしまうなんて先生は悲しいわっ!」
「ちっ、違うんだっ、先生っ!」
今はとにかく時間かせぎをと乱馬はあわててガバッと立ち上がった。
「こっ、これはっ、これはっ・・・!」
(お、落ち着け、早乙女乱馬! 言い訳でごまかすのは親父の得意技だったじゃね
えか! それを思い出すんだっ!)
キッとひな子をにらんだ乱馬はなお記憶を探りながら言い始めた。
「じ、実は・・・、む、昔々あるところにじーさんとばーさんがいて・・・」
固唾を飲んで見守っていた教室中がドッシャアッと崩れたが、ひな子だけは真剣な
表情でウンウンうなずきながら聞いていた。
「そ、それでどーしたの、早乙女くん?」
「そ、それである日ばーさんは川へ・・・!」
ここでようやく乱馬は最適な言い訳を思いついた。
「い、いや、ばーさんは道路へ洗濯に行ったんだ。そしたらその道路には信号も横
断歩道もなくてとても困った!」
「そ、それで・・・?」
ひな子はゴクッと唾を飲み込んで話の続きを待った。
「そこへ偶然俺たちが通りかかった。しかしばーさんの手を引いて渡ろうにもその
道路は何と! F1のコースでさすがの俺たちも思案に暮れたんだ!」
「昔々の話じゃなかったのか?」
ボソボソささやき合う男子生徒をひな子は一喝した。
「私語は慎むよーに! さ、続けて、早乙女くん」
「まさにその時! このいつもはマヌケな天道あかねがとんでもねー素晴らしいア
イデアをひらめいたんだ!」
「誰がマヌケよ!」
ゴンと乱馬の机の脚を蹴るあかねに乱馬はコソッと黙らせる仕草をした。
「いーからおめーも聞け、あかね! ・・・で、そのアイデアと言うのは・・・」
乱馬は痛く感動したように拳を握りしめてドド〜ンと叫んだ。
「この天道あかね自らが横断用の旗になることだったんだあああああっ!!」
「そっ、それでそんな風に・・・!」
ひな子は愕然と身を引いてムスッとにらむあかねを見つめた。乱馬はフッと肩をす
くめ首を振ってつけ足した。
「ま、ばーさんは無事に渡れたんだし、俺たちどんな罰でも受けるぜ、先生?」
「・・・わかりました!」
ひな子は感動の涙をダラダラ流しながらグッと顔を上げた。
「天道さん、あなたは素晴らしい人です! そのまるで宮沢賢治のような自己犠牲
精神に免じて罰ではなく、あなたにクラムボンの称号を名乗る名誉を許可します!
 いーですね、天道さん? あなたはこれから以後、天道『クラムボン』あかねと
名乗っていーのですよ!」
「良かったわね、『クラムボン』あかね!」
他の女生徒の祝福の握手を受けながらもあかねは苦笑いするばかりだった。
「そ、それってほとんど罰のよーな気が・・・」
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