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#1213/3141 るーみっく☆わーるど ★タイトル (QKM33822) 93/11/13 19:41 (148) 小説>らんま「夢2つ」 SAMWYN ★内容 【 夢2つ 】 小説 ”らんま1/2” ID:QKM33822 SAMWYN 「ただいま〜!」 のどかな日曜の午後3時、らんまは中華まんの袋を胸に抱えてかすみたちより一足 早く天道家に帰って来た。ヨッと靴をほうり脱ぎながららんまは茶の間の方へ呼び かけた。 「あかねぇ〜、かすみねーちゃんがさァ〜、中華まん買ってくれたよォ〜!」 返事はなかったがらんまは気にせず廊下を歩きながら続けた。 「おじさんの買い物の碁盤がなかなか決まんなくてさァ〜、んで夕飯遅くなりそー だからおれに先に帰っておめーと食ってて、だってさ!」 なお無言の茶の間に少しムッとしたらんまはいくらかウンザリしたようにブチブチ 言いながら茶の間のフスマをガラッと開けた。 「何だよっ、ま〜だ朝の事根に持ってんのかよ? おれが抱き止めてやったから軽 い捻挫ですんだんだろォ? もとはと言やァおめーが鈍いくせに・・・!」 あかねはテレビをつけっ放しにしながらテーブルにうつぶせてスースー安らかな寝 息を立てていた。 「・・・何でー、寝てんのか」 書き忘れたが、朝の事と言うのはこうである。八宝斉が洗濯カゴから落ちたかすみ の下着を拾い物なぞと抜かして取るや否や逃げ出したのをあかねと乱馬が2人で追 い駆けたのだが、あかねがあやうく足をすべらせて屋根の上から落ちかけたのだっ た。丁度後ろにいた乱馬が抱き止めたが間に合わず、あわや石どうろうに激突か、 と言うところを乱馬の秘技「にゃんこ宙返り」で無事着地、とホッとした瞬間、驚 きあわてた八宝斉がいざ助けんと投げ放った八宝大華輪がちゅど〜んと爆発して2 人は縁側へと吹き飛ばされたのである。おかげで乱馬は縁側で碁を打っていた早雲 と玄馬に激突、乱馬は背中を碁盤にしたたか打ちつけたが壊れたのは碁盤の方、そ のショックでさらに飛ばされたあかねは果敢にも目前に迫るタンスに蹴りを食らわ し反動でクルクル回りながら見事にフワッと畳の上に着地、のつもりがたまたま置 いてあった雑誌にズルッとこけて結局足首を捻挫してしまったのであった。 「・・・悪いのはあのじじーだかんなっ。つってもどっかに雲隠れしちまったけど よ」 らんまはあかねのそばにしゃがみ込んで少し心配そうにこちらに向けられているあ かねの寝顔をのぞき込んだ。まだ起きる気配のないあかねに、らんまは袋から肉ま ん1個を取り出してあかねの顔の前にソッと置いた。 「今はこれでも食って機嫌直せよ、な? あの妖怪にゃおれが後でたっぷりお灸据 えてやっから、な?」 よほど疲れていたのか、あかねは何もそんなに、と思うほど一生懸命眠り続けるば かりだった。と、不意にあかねの鼻がヒクヒクッと動いたかと思うとツッとよだれ が垂れた。 「・・・プッ!」 一瞬キョトンとしたらんまは思い切り吹き出しそうになるのをかろうじてこらえ、 手で口を押さえながら必死に声を殺してククククと笑ってしまった。 (・・・おっもしれ〜!) どうにか笑い止んだらんまは悪戯っぽくクスクス笑いながらあかねの前の肉まんを ススッと離してみた。案の定、あかねは夢でも見ているらしく、この世の終わりが 来たかのような表情になった。今1度肉まんを寄せると天国に来たかのように嬉し そうな顔をする、らんまはククククと必死に笑いをこらえながら何度も何度も肉ま んを寄せたり離したりするのをもはや自分でもどうにも止められなかった。 (きゃはははっ、かっわいい〜っ!!) 「・・・何してんのよ、あんたら?」 時の立つのも忘れていたらんまはそのなびきのクールな声に、借りて来た猫のよう にパパッと正座して作り微笑を浮かべた。あかねもようやくハッ! と顔を上げる とまだ少し寝ぼけた顔でらんまとなびきの方へ何事かと顔を向けた。 「ヨッ、あかねっ!」 らんまはまるで何事もなかったかのようにニパッと笑って中華まんの袋をドンッと テーブルの上に出した。 「肉まんあんまん買って来たからいっしょに食おーぜ!」 「ん・・・、あ、どーも、あ、お帰りなさい、2人とも」 あかねはようやく目が覚めた様子で頭を振りながら座り直した。早くもあんまんを パクつきながららんまはなびきに振り向いた。 「なびきはどーすんの? いっしょに食うか?」 「いーわ、あたしはこれから友だちんとこ行くから」 そう言って手を振りながら去ろうとしたなびきにらんまはそう言えば、と聞いた。 「そーだ、親父たちは?」 「ま〜だ碁盤選んでるわ。あたしは約束があるからお先に失礼したってわけ」 なびきはウンザリしたように首を振りながら玄関の方へと去って行った。 「ほら、お茶」 「あ、ありがと」 らんまの入れた茶をすこしいぶかしげに受け取りながらあかねはまだいくらかボン ヤリとテレビへと目を戻した。 「・・・な〜んか変な夢見たわ、あたし」 「ん? どんな?」 急にらんまが目をいきいきと輝かせながら振り向いた。あかねはしかしそれには気 を止めず、ボ〜ッとテレビを眺めながら考えるように語った。 「それがね・・・、かすみおねーちゃんがものすごくデカい肉まん持って来てくれ た夢なの」 「へえ・・・! で、で?」 身を乗り出して聞くらんまを少しいぶかしげににらみながらあかねは肉まんをひと かじりして続けた。 「うん、でね、大喜びで食べようと思うとかすみおねーちゃんがあたしより先に一 口で食べちゃうわけ・・・。それが何度も何度も繰り返されるのよ」 「へえ〜、かすみねーちゃんが一口で、かァ・・・!」 らんまはひどく感心したように腕を組んでウンウンうなずいて見せた。 「あかねって意外に想像力あんだなっ! おれなんか想像すらできねーや、かすみ ねーちゃんが巨大な肉まんを一口でパクッと食っちまうなんて!」 「ほ〜んと、変な夢・・・!」 不意にあかねがハッとしたようにらんまの顔をマジマジと見つめた。らんまはもし やバレたか、とギクッとしながらも努めて平静にその目を見つめ返した。 「な・・・、何だよ、あかね? いきなり?」 「・・・ううん、何でもない」 あかねはまさかね、と言うように首を振るとまたテレビへと顔を戻した。 (かすみおねーちゃん、乱馬そっくりのおさげだったのよね・・・。何でごっちゃ になっちゃったのかしら・・・?) 「・・・」 同じくテレビへと顔を向けたらんまは今のやり取りの意味を考えるかのように、た まにチラッとあかねの横顔を見やるのだった。 「・・・捻挫するなんて、あたしもまだまだ修行不足ね」 すでに外は暗くなっていたが、まだかすみたちは帰って来なかった。見慣れないテ レビはあくびを呼び、あかねは手を後ろにのけ反るようにノビをしながらつぶやい た。 「・・・」 「・・・乱馬?」 無言のらんまにあかねはん? と振り向いた。らんまもすでに退屈し切っていたの か、あかねの気づかぬうちにテーブルにつっ伏すようにしてスウスウ静かな寝息を 立てていたのだった。 「・・・」 その寝顔をジッと見つめていたあかねは別に深い考えもなく、らんまの鼻をチョン とつまんで見た。 「・・・ん、んっ、ん〜っ・・・プハ〜」 息ができないのか、らんまは苦しそうな顔で顔を振ったがあかねはなおキュッとつ まみ続けて見た。しばしプルプルともだえていたらんまはようやく耐え難い圧迫の 逃げ道を見出だしたのか、口からハ〜ッと息を吐き出したまま、少し不自由そうに 口で呼吸をしながらもなお眠り続けた。 「・・・プッ!」 それまで冷静にらんまを見つめていたあかねは不意に思わず吹き出してしまった。 「もォ〜、しょーがないな〜」 クスクス笑いながらあかねはヨイショッと立ち上がって、足を引きずりながら押し 入れから毛布を取り出した。 「こんなとこで寝てたらカゼひいちゃうゾ、こいつっ」 らんまの背中に優しくソッと毛布をかけてやりながら、あかねはまたクスクス笑っ たのだった。 「ただいま〜」 夜8時頃になってようやくかすみが帰って来た。荷物とコートを置いて髪を束ねる かすみにようやくらんまも目を覚まして、寝ぼけ目でキョロキョロまわりを見回す と、後ろのかすみに気づいてまだ眠たげな声で言った。 「あ、おかえり、かすみねーちゃん。あれ、親父たちは・・・?」 「それがねぇ、やっぱり1度使って見ないと、って、お店で一勝負始めちゃったの よ。あら、なびきは帰って来てなかったの、あかね?」 エプロンをキュッと背中で結んで茶の間を出ようとしたかすみは思い出したように 聞いた。 「あ、なびきおねーちゃん、友だちの家に行って来るって」 「そう、じゃあ3人ね? 今からじゃ間に合わないから店屋物取るけど、何がいい かしら?」 「あ、あたしラーメンでいーわ!」 元気良く答えるあかねにらんまも目をこすりながらボッとうなずいた。 「ん、おれもラーメンでいーよぉ、別に・・・」 「じゃあラーメン3つね?」 かすみはわかったわ、とうなずいて部屋を出て行った。その背中を見送ったあかね はとなりでまだ眠そうに首を振るらんまの横顔を眺めながらクスッと笑った。 「ねえ、乱馬? 何か、変な夢見なかった?・・・」 【 夢2つ 】終わる