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投稿日時:1994/ 3/ 7 23:29 投稿者ID:QEG72756
#1506/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QEG72756)  94/ 3/ 7  23:29  (123)
考察>私が「らんま」にのめり込んでる理由   飛鳥 杏華
★内容

 何と言ったらいいのか、「らんま1/2」はすごい作品ですよ。これほど高度な
作品はあまり類を見ないでしょうね。高橋留美子という人は、すごい作家だと敬服
せずにはいられません。

 「らんま」はコメディー…。確かに、表面的にはそうかもしれません。1番それ
に近い形態をとっていると言えますね。でも「らんま」には、もう1つの顔があり
ます。かなり意地悪く、辛辣なもう1つの顔が…。(^_^;)

 「らんま」は、風刺ものだと私は見ています。風刺と言えば、たいていは政治な
どを皮肉ったものですが、「らんま」は「作者と読者の関係」を実に巧みに映し込
んでいると言えるんです。

 単純に言ってしまえば、旧作に固執して、「らんま」という作品をちゃんと読も
うとせず、頭ごなしに「つまらん」「やめろ」などと言ってくる批判読者を作品の
裏側で皮肉ったり、叩いたりしているってことです。これは実に恐いんですが、そ
の図式が作品の中にチラリと見えると、「あーっ、こいつは…。」と、その高度さ
にたまらなくなって、思わず顔を覆い、身震いしてしまうんです。「こいつはすご
い。けもさん、やってくれるなぁ。」と…。

 「らんま」に登場してくるキャラは、たいてい何らかの記号を背負ってきていま
す。特に現在、レギュラークラスのサブキャラたちが登場時に背負っていた(現在
も引きずっているキャラもいますが)記号は、実に辛辣です。良牙、珊璞、沐絲、
右京…。みんな、乱馬を倒しにやって来るんです。いや、「らんま1/2」を倒し
に…。(^_^;)

 ここでは、良牙に絞って書きますが、「響 良牙」というネーミング。「りょう
が」という音の意味については改めて書くまでもないでしょうから省きますが、そ
の「りょうが」が、この字で書かれていることに意味があるんですね。

 まず、「響」という文字です。これは、るーみっくファンなら響子さんの「響」
だと、すぐにピンときますね。まさにそうなんです。良牙の前髪が響子さんのそれ
に似ているのは、むしろ必然と言えるのです。そして「牙」と言えば、代表的なの
はラムです。良牙の目が白く縁どられていて、ラムの目に似ているのも、実際、
「牙」とおぼしき犬歯があるのも、ラムを表す記号を背負っているからなんです。

 極めつけは、バンダナです。(後に服もそうなりますが、)このバンダナの色は
何色ですか? そうです。模様こそ幾何学模様化されてはいますが、タイガーカラ
ーなんですよ。

 この良牙のバンダナは、乱馬に復讐しに来たとき初めて登場してくるもので、乱
馬を追って中国に渡ったときまでは無地のサポーター(または、ヘアバンド)なん
ですね。つまり、復讐の旗じるしとして、タイガーカラーを掲げているのだと見て
とることもできるのです。

 こんな初期設定がなされた良牙が、「おまえ(乱馬)のせいで地獄を見たんだ」
と言って復讐にやって来るんですから恐いですよね。(^_^;) つまり、「めぞん」
「うる星」のファンだった読者が、「らんま」という作品に馴じめず、「らんま」
のせいでつまらない思いをさせられたと文句を言ってきているという図式なんです。

 この良牙の登場によって「らんま1/2」は、その路線を大きく変えさせられて
しまうんです。その象徴が「あかねの断髪」なんですね。この断髪は、良牙の登場
によってもたらされている。すなわち、批判読者の登場によって、「らんま」の路
線が変わってしまったと見ることができるのです。

 断髪までの「らんま」は、乱馬とあかねの関係が中心に描かれてきていましたね。
そこに、東風先生とかすみさんが絡んで、四角関係を形成するかたちになっていま
した。

 この時点で、あかねは東風先生が好きでした。しかし、東風先生はかすみさんが
好きで…。かすみさんは、あかねにとって姉であり、女性としての魅力に満ちた人
であって、あかねが髪を伸ばしたのも、少しでもかすみさんに近づきたい、髪を伸
ばせば、自分もかすみさんのように女らしく見てもらえるんじゃないかという思い
からでした。あかねが東風先生への想いを成就させるためには、かすみさんをいつ
か超えなければならない。つまり、かすみさんは、あかねが女性としていずれ超え
ていかなければならない目標となる理想的な女性として設定されていたと言えるの
です。

 一方、あかねが東風先生に惚れている以上、あかねの目を、心を自分に向けさせ
るために、乱馬はこの一見強そうに見えなくて、実はものすごく強い(であろう)
東風先生を超えて、自分の強さをあかねに認めさせなければならなかった。すなわ
ち、東風先生は、乱馬がいずれ男として、格闘家として超えていかなければならな
い達人として設定されていたと言えるでしょう。

 この時点まで、かすみさんと東風先生というのは、「らんま」という作品におい
て、実に重要な役割を演じていたんです。ところが、良牙の登場によって引き起こ
された「断髪事件」によって、この設定が見事なまでにクリア(清算)されてしま
ったんですよ。

 断髪によって、あかねは東風先生への想いを断ち切ってしまい、乱馬に対するこ
だわり(「裸を見られた」「変態体質」など)も捨て去ってしまうことになるんで
す。

 これによって、かすみさんと東風先生はこの作品での存在意義を実質的に失って
しまい、登場機会が激減して行くことになってしまいます。いや、さらに極論する
ならば、「らんま1/2」第1部は、わずか14話にして完結してしまったとさえ
言えるのです。

 しかし、良牙が今もそんな恐いキャラなのかというと、そうではありません。一
旦、そのような記号を背負って登場したキャラを、けもさんは実に巧みに「らんま」
の一員にしてしまうんですね。つづく第15話のサブタイトルは、まさに「良牙変
身」です。

 もちろん、表面上は良牙が黒豚のPちゃんに変身することが発覚する話ですが、
それは同時に良牙が批判読者から「らんま」の一員に、自称「センチでいい奴」に
変身したことを意味してもいたんです。そして、さらに「らんま1/2」自体の変
身をも…。

 これにつづく第16話で、乱馬は初めて自ら可愛らしいポーズをとってみせます。
そうです。ここから「可愛いらんまちゃん」を中心に据えた新たな路線がスタート
して行くのです。


 …と、良牙の登場ひとつとってもこれだけ書けてしまう。これでも、ざっと書い
てみたつもりなんですよ。(笑) 「らんま1/2」っていう作品は、実に考察の
材料を豊富に含んだ作品なんです。こいつを考察しない手はないですよ。(笑)

 しかも最近では、けもさん、わかっててやってるようなところもあって、意味深
な絵や台詞をチラつかせて、我々に考察させて「らんま」の高度さを世に知らしめ
てるんじゃないかと思えるほどです。だから、ここものぞいてるんじゃないかなん
て思ったりしたわけなんですが…。(^_^;)

 これは、生半かな作家じゃできないことですよ。実に賢く、それを我々のような
者が言い出さなければ気がつかないように巧みに作品に組み込んで、表面だけを見
ても楽しめて、さらに裏が読めるともっと面白いという作品に仕上げているように
思えるんです。まさに、1話で2度おいしい!(笑) いや、相乗効果で何十倍、
何百倍にもおいしく感じてしまうんです。

 こんなものが見えてしまうと、もう病みつきです。もう、「らんま」ファンはや
められませんね。(笑) これが、私が「らんま」にのめり込んでいる理由です。


                    QEG72756   飛鳥 杏華
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