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#1702/3141 るーみっく☆わーるど ★タイトル (XGM38132) 94/ 6/ 8 23:59 ( 89) 考察>RE#1693 惣一朗の遺品を返すという事 by阿修羅 ★内容 《KENICHIさん》 RESありがとうございます。あの文章はかなり曖昧な部分があるから、読み取る の大変だったでしょう(^_^;)? >とっていませんでした」という感じで、大事なことを教えらているような感じで >読みました。 恐れ入ります(^^)。 では本題に。あ、一応。あくまで僕の読みです。 > 今までは、「五代を好きになることで、惣一郎が否定される」、つまり「惣一郎 >を否定しないことは、五代を肯定しきれない」という、パターンからの行動ともと >れると思っていたんですが、阿修羅さんの説の方が自然ですね。遺品を返すことで >少しでも惣一郎さんとのつながりを感じさせないようにするという目的から考える >と似ているのかも知れないけど。表現の差かな? まず、前回の考察で言いきれなかった事を少し(と言うより、説明のし直しだな(^_ ^;)、こりゃ)。 『契り』で、「どうしていいかわからない」が、響子の最後の手段である事は、#16 52で言った通りですが、それを受けて五代が「すみませんでした」と言いますね。こ の言葉が、五代が自分の中の惣一朗の〈幻影〉に気付いた事の表れです。そして、そ の後響子が「わたしの事だけ、考えて…」と言います。これは、ようやく幻影に気付 いた五代に、「もうその幻に惑わされないで」と念を押している、と考えられます。 同時に、それまで幻影に向けられていた意識を、全て自分へ向けて欲しい、という欲 求です(独占欲とはちょっと違う)。(注 この時点では五代は幻影には気付いてい るが、して、〈響子の〉惣一朗をどうすればいいかは、まだ分かっていない) その後、遺品と結婚写真が出て来る訳ですが、響子はそれらがまた五代に幻影を抱 かせてしまうのではないかと心配します。だから、「もうあなただけなの…」と、本 当に正直に見ればある意味嘘(注 言葉通りが本心でないと言うのではない)を、つ きます(だから健気だと感じたんです)。何故嘘かと言えば、この時、まだ響子は惣 一朗の思い出を五代から隠してます。隠しているから遺品を五代の目にとまらぬよう 返すというんです。「隠している=響子自身はまだ惣一朗に縛られている」という事 で、にも関わらず「あなただけなの」と言った訳です。つまり、響子の中ではまだ、 思い出と五代への思いの間の葛藤が続いているんです。よく考えれば、これは響子が 彼女自身に言い聞かせている、と解った方がいいかも知れません。 五代は、前の日に響子が、結婚写真を五代に見せた事を謝った事や、遺品を見て泣 いていた事、そのあとの響子の様子(「ケジメつけなくちゃ、ねっ」と言う辺りです )を知っています。その上で、「もうあなただけなの」を聞いた彼は、それに潜む、 嘘の部分を聞き分けたんです。つまり、板挟みになって苦しむ響子の姿が、そして、 それに気付けなかった自分が、ハッキリとわかったんです。 その後墓前で、響子はもう一度、遺品を返す、と、(惣一朗に言っている様に聞こ えるが)五代にいいます。この時の遺品を返そうという動機は、それまでのものと異 なります。これまでは、先に言った事が理由で、嘘が含まれていました。対して今は 、抵抗なくそれを言えました。何故か? それは五代の墓前での決意を聞いて、もう 惣一朗を隠す必要がなくなったからです。 隠していれば、当然自身も思い出を自然に振り返ることが難しくなります。だから 、少しでも思い出に関し、振り返るためのキーになるものは手放したくありません。 しかし、隠さなくても良くなったのなら、わざわざキーを用意しておく必要が無いん です。 ならばあえて、返す必要もないと言えますが、それは、響子の思いやりと、KEN ICHIさんの言う通り、性格のためでしょう。ここまで来てようやく、こういった 普通の動機だけで、返そうと、言えるようになったんですね。 長くなりましたが(^_^;)、ここでの惣一朗をめぐる二人の心理の推移は、惣一朗と 五代のどちらかを否定する肯定する、と言う物ではなく、五代が、響子がその決断を しなくてもいい様(と言うか、絶対出来んのではないでしょうか)、響子の思い出の 惣一朗を受け入れる覚悟をし、結果としてそれが響子の心で唯一閉ざされていた部分 を解かせしめた。と、いう事だと思うんです。 で、「あなただけなの」の前の遺品を返すと言った時は、そこには健気な嘘がある 訳で、実際には惣一朗の否定をしている訳ではないので、遺品を返すと言うのは、響 子自身の行動に対する表面的な理由としてはそうかも知れませんが、その行動を起せ しめた深層の心理では、少なくともその為(惣一朗否定)ではないと、思うんです。 (あ〜、くど(;)) > この響子さんの行動に対して、五代君は「無理に返さなくても」と言っています。 >五代君にしてみると、惣一郎さんの存在にもう心惑わされないという思いを持って >いるという事でしょう。 確かに、そうですね。ただ、もう少し細かく言うなら、墓前で決意を語る前後で若 干思いの強さと心理の余裕に差があるでしょうね。なぜなら、『桜の下で』で惣一朗 の墓へ行く前の日(0:00過ぎなら当日かな?)の夜、五代はなかなか寝つけませんで した。これは迷いの表れですからね。また、多分この時、及び遺品に関するやりとり で、板挟みになって苦しむ響子、が見え始めたんでしょうね。 《一言いわせて(笑)》 『桜の下で』は、流石にラストだけあって、心理描写のキメの細かさは言葉では言 い表せません。特に、五代の心理の動きはたいへん細かく、妥協を許さない程になめ らかに描かれていると思います。そのせいか、今回の文も #1652 も、五代に関しては 同じ様な事ばかり言っているようになってしまいました。できるだけ、微妙な心理の 動きをリアルに説明したかったからなんですが(あ、言い訳(^^;))。 それにしても、五代のこのラストの言葉(墓前の奴ね)、最高じゃありませんか。 僕はどちらかって言うと五代の立場で読んでいるんですが、この言葉を聞いた時、本 当に意外で、こいつはなんて優しい男なんだ、って感動しましたから。で、この時は すっっかり響子の立場になってました(笑)。 ああ、高橋留美子さんに感謝!(笑) 94/6/7 by 「さようなら惣一朗さん…」でいつも鳥肌が立つ 阿修羅 .