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投稿日時:1993/ 9/12 11:30 投稿者ID:QEG72756
#1134/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QEG72756)  93/ 9/12  11:30  (118)
考察>らんま完結! 第1回(1/2)    飛鳥 杏華
★内容

 ここ数回の「らんま1/2」を見ていると、どうも最終局面に向けてのキャラ整
理段階、あるいは、その前フリ段階に入ったように思える。まだ、簡単には終らな
いだろう。最低でも半年はあると踏んでいるが、そろそろ終ってもいい頃である。
いや、私は既に完結しているとさえ思っている。「らんま1/2」という作品を
形成するメビウスの輪は、既に閉じており、現在は、巨大なエピローグの中にある
のだ。なぜ、そう言えるのか、それはあとで述べるとして、順を追って「らんま1
/2」という作品が、いったい何物であったのかを検証してみよう。


   結婚はゼロから始まる浪漫…

 突然、「らんま1/2」とは無関係と思えるフレーズに戸惑う者もいるかもしれ
ない。だが、これは「らんま1/2」の生い立ちを語る上で、忘れてはならない言
葉なのである。

 これは、1987年7月、ビッグコミック・オリジナルに掲載された読み切り作
品「浪漫の商人」に出てきた言葉である。はて、これがなぜ「らんま1/2」と関
係があるのだろうと、一瞬、考えてしまう者が多いであろう。だが、1987年7
月初旬という掲載時期を思い出してみれば、なるほどとうなずけるはずである。

 この年の1月、「うる星やつら」が、続いて4月には「めぞん一刻」が、長年の
連載にピリオドを打った。そして、「らんま1/2」の連載が8月から始まる。こ
の「浪漫の商人」は、「人魚の森」と「1ポンドの福音」にも挟まれ、まさにこの
連載ブランク時期の中間点に位置する作品である。ここにおいて、「結婚」、「ゼ
ロから始まる…」という言葉が何につながっているのかは、単純明解である。「結
婚」とは、「うる星やつら」と「めぞん一刻」の結婚であり、二大連載を完結させ、
文字どおりゼロに戻った高橋留美子が、自らの再出発の決意を示したものである。

 この作品のヒロイン、縁(ゆかり)は、倒産寸前のオンボロ結婚式場「浪漫会館」
の女館長で、離婚して1年という女性である。このシチュエーションは、まさに、
この時期の高橋留美子自身の投影であろう。ここでの「離婚」は、言うまでもなく、
二大連載との決別を意味し、彼女の経営する浪漫会館の崩壊寸前という様もまた、
当時の高橋留美子の置かれた立場を表現したものだと言えよう。

 物語は、一旦は浪漫会館をたたむ決心をした縁が、無愛想だが、心のあたたかい
仲間に支えられ、再びゼロから(マイナスからせめてゼロに持ち上げるまで)やり
直そうと決心するまでを描いている。この決心のきっかけとなったのが、縁の父に
世話になったという老夫婦の結婚式でり、縁の父が老紳士に語ったという「結婚は
ゼロから始まる浪漫」という言葉なのである。

 だが、この過程で縁は迷っている。別れた夫からの呼び出しに、もしかしたら、
やりなおせるかもしれないと、老夫婦の式直前に浪漫会館を飛び出し、夫に会いに
行く…。高橋留美子自身、やはり迷った時期があったのであろう。二大連載は、読
者にとっても作者にとっても巨大な存在であったに違いない。それを終えて新たな
道を進むことは、暗闇の中を手探りで進むような不安感を伴う。当然のように、二
大連載を超える作品を求める読者からのプレッシャー。ある意味では恐怖に近い
ものがあったかもしれない。

 夫と復縁すれば…という気持ち。それは、必ずしも二大連載をそのまま復活させ
るという意味ではない。が、少なくとも、あの二大連載作品の路線に再び収まれば、
まず、安定した人気は得られるであろう。だが、作家としてそれは後退を意味する
ことになる。安定した人気への誘惑と作家として後退はしたくないという意地が高
橋留美子の中で葛藤を繰り返したのではないだろうか?

 結局、高橋留美子は、二大連載からの完全別離を決意する。縁のそばで文句を言
いながらも、彼女を支え、別れた夫への未練を追及し、最終的に彼女にゼロからの
やり直しを決意させるフロント長。彼の名は「別当」という。文字どおり、「あた
るとの別れ」である。そして、「結婚はゼロの地である」という言葉…。ここにお
ける結婚とは、言うまでもなく、「うる星やつら」と「めぞん一刻」の結婚である
が、それは、ただ単に両作品を掛け合わせた作品を描こうということでなく、2つ
に分かれていた作品への思い入れを1つに合わせ、1作品に全力投球で向かって行
こうという意欲の現れであったろう。「らんま1/2」1本体制が生まれた背景に
は、こうした表面に現れない心の葛藤があったことが見てとれる。

 私は浪漫を売る商人(「商人」を「しょうにん」ではなく、「あきんど」と読ま
せているところが、いかにも彼女らしいところである)…。このタイトルは、まさ
に過去、現在、未来にわたって自分が歩むべき道を、果たすべき役割を指し示した
ものであったと言えよう。


   男の子が主役の「らんま1/2」

 さて、こうした背景を背負って登場した「らんま1/2」であるが、この作品で
高橋留美子は何を描きたかったのだろうか? 現在に至っては、その先端は膨大に
広がり、もはや単一な目的を指摘するのは不可能であろう。だが、連載当初におい
て高橋留美子が描きたかったのは、「女の子」と「男の子が主役の漫画」である。

 これは、高橋留美子自身が「高橋留美子 ロングインタビュー 私の夢の日々」
(昭和63年2月20発行 少年サンデーグラフィック・スペシャル[うる星やつ
ら]完結篇・ボーイ ミーツ ガールに掲載)の中で語っていることである。

> 何を描きたいか、女が好きやと。女の子を描きたかったんです。でも、たまに
>は男の子が主役のまんがだって描きたい! そこで視点をかえて、男が女になっ
>てもいいじゃないかと発想したわけです。

 だが、「女の子」はともかくとして、「男の子が主役の漫画」については、額面
どおりこれだけの理由だとは言えないであろう。

 彼女の作品は、「女でありながら、男心を見事に表現している」という評を得た
りしている。五代の心理や、あたるのダンディズムなど、確かにその評価にうなず
かされるものもある。だが、一方で「やはり女であり、まだ、本当の男の世界は描
けてない」という指摘もあった。

 実際、二大連載は名目上の主役はあたると五代という男であるにもかかわらず、
人気に火を付け、作品上を華やかに飾ったのは、ラムであり、響子であり、その周
囲を取り巻く美女、美少女たちであり、彼女自身もそれに気づいていたからこそ、
今度は「男の子が主役の漫画」をと考えたのではないだろうか?

 女性でありながら少年漫画界に籍を置く彼女にとって、男性作家たちに負けない
真の少年漫画を描き、その頂点立ちたいという気持ちが背後に潜んでいたように思
えるのである。

 「らんま1/2」第1話における
「だって、男の子には絶対負けたくないんだもん。」
というあかねの台詞は、その理由が一切語られていないため、不可解とも言えるこ
だわりのように思えた。が、これが高橋留美子自身のそうした少年漫画に対するこ
だわりだとしたら、容易にうなずくことができる。

 主人公の乱馬が半分男で半分女であるという設定は、女性でありながら少年漫画
界に籍を置く自分自身の投影でもあり、乱馬が誰にも負けずに勝ちつづけて行く姿
には、他のどの作家、どの作品にも負けたくないという高橋留美子の気持ちが込め
られていたと言えよう。

 そして恐らく、この段階での「らんま1/2」の完結は、乱馬が完全な男に戻る
こと、すなわち、高橋留美子が真の少年漫画を描くことによって達成されるもので
あったに違いない。そしてそのために、乱馬(高橋留美子)は、負けるわけには行
かなかったのである。
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