SIG るーみっくわーるど SIG るーみっくわーるど」は、漫画家 高橋留美子先生(るーみっくわーるど)の作品が好きな仲間が集まっているグループです。 るーみっく好きなメンバー間コミュニケーションのためのチャットや掲示板の提供、るーみっく系イラスト・小説・リンク集の公開などを行っています。 オフ会も不定期に開催されています。1992年6月にPC-VAN上で誕生した歴史あるグループです。
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投稿日時:1993/10/14 20:35 投稿者ID:QKM33822
#1180/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QKM33822)  93/10/14  20:35  (198)
小説>らんま「見果てぬ夢を」1 SAMWYN
★内容
【 見果てぬ夢を 】                小説 ”らんま1/2”

                                                  ID:QKM33822 SAMWYN

  プロローグ
「よォ、良牙! ひっさしぶりっ!」
らんまにポンと肩を叩かれた良牙は怒りにこめかみをヒクヒクさせて振り向いた。
「きっ・・・、貴様と言う奴はぁ〜っ!! 一体どんだけ俺の邪魔すれば気が済む
んだっ!!」
「・・・へ? 邪魔だった、おれ?」
キョトンと聞き返すらんまをにらみながら良牙は指をバッと後ろの道に指差した。
「そうだとも! 俺が告白の決意を固めるためにどれほど苦労してるのかわかっと
んのかっ、貴様は!! それを毎度毎度、出鼻を挫くように声かけやがって!」
「あ、お帰りなさい、良牙くん!」
不意に後ろであかねの声がした。おそるおそる振り向く良牙にあかねはンフッと微
笑んで見せた。
「やっ、やあっ、ただいまっ、あかねさん!」
たちまち良牙はボッと真っ赤になって手に持っていた花束をブチブチむしり取って
しまった。あかねは不思議そうにたずねた。
「ねえ、告白ってなあに、良牙くん?」
「・・・え゛!? そ、そそ、そそそれは、それはっ・・・!」
ギクッとなりながらもなお残る決意で何とか言おうと必死になる良牙を心配そうに
見つめていたらんまは少し不満げにチロッとあかねをにらんだ。
(良牙も可哀相に、こ〜んな鈍い女好きになっちまうなんてよ!)
「いきなり好きだなんてゆーなよ、バカ! ここはさりげなく『一緒にお茶でも』
とか言えよ!」
「な、なるほど・・・!」
見かねてコソッとささやくらんまに力づけられた良牙はスウッと息を吸い込んだ。
(無心だ、無心になって言えば不自然でも何でもねえ! ・・・行くぜっ!!)
「あっ、あかねさんっ!!」
グッと迫る良牙にあかねはタジッと身を引いた。
「な・・・、なーに、りょ、良牙くん、ハハ・・・」
「おっ・・・、お茶と一緒に俺でも飲まねえかっっ!?」
やったぜ! と拳をグッと握りしめた良牙は直後に言い間違いに気づいて愕然とし
た。案の定、あかねは目を点にして良牙を見つめるばかりだった。
「・・・え? あ、あの、良牙くん? 今、何て・・・?」
「喫茶店でも入ろうってことだろ! 久しぶりなんだし、行こーぜ、あかね!」
あわててらんまが今にも逃げ出しかねない良牙の腕にグッとすがりついて助け船を
出した。あかねはようやく、なるほど! とポンと手を打って言った。
「あっ、いーわね〜、それ! うん、行きましょ!」

  1.悲しい恋
「・・・貴様、何で俺を助けた?」
和やかにあかねと談笑しながら喫茶店へと向かっていた良牙は不意に気づいてあか
ねと反対側のとなりを歩くらんまにコソッと聞いた。
「・・・おめーがあんまり可哀相だからさ、デートの1回ぐれーさせてやろーって
思ってな! ま、もちろんおれにもおごりだぜ!」
「・・・金やるから適当なところで消えてくれんか?」
財布をコソッと出そうとした良牙の手をらんまはウンザリしたように止めた。
「バカ、3人だからあかねも安心してついて来てんだぞ! 大丈夫、今回は邪魔す
る代わりに助けてやるよ! 告白も邪魔しねーぜ?」
「ら、乱馬・・・!」
愕然と身を引いた良牙はダラダラ涙を流しながららんまの手をグッと握った。
「貴様、ただのオカマ野郎かと思っていたが本当はいい奴だったんだなっ!!」
「・・・オカマはよけいだ、オカマは」
ムスッと答えるらんまにあかねが食ってかかった。
「あ〜、ズル〜い、乱馬ばっかし良牙くんと話してるぅ〜!」
「ほら、良牙! 握る相手が違うだろーが!」
らんまはわざと怒ったように良牙の手を振りほどいた。再び世間話に花を咲かす良
牙とあかねをチラッと見ながららんまはフッとため息をついた。
(・・・あかね、おれじゃなきゃダメなんだよな。・・・わかってるのに良牙を助
けるなんて、おれってヤな奴だな・・・)
らんまの脳裏をかすめるのはついに意を決して告白する良牙と悲しげに首を横に振
るあかねの情景だった。ブンブン首を振ってそれを追い出したらんまはグッと握っ
た拳を見つめた。
(いや、いつかはそーなんだから、早いうちにあきらめさせた方が良牙のためなん
だ! つれーだろーけど耐えてくれ、良牙! その悲しみをバネにまたおれに挑ん
で来い、おれは、おれだけはいつでも本気で相手になってやっからな!)

「ここがあたしのお薦めよ! 名前が変だからみんなあまり入りたがらないけど、
ここのコーヒーってほんっとにおいしーの!」
喫茶『爆発炎上』のドアを開けながらあかねは後ろの良牙にニッコリ微笑んだ。良
牙はただもうコクコクうなずくばかりだった。
「わ、わかった! 俺もこれからはここにするぜ、あかねさん!」
「窓際の席がいーな、おれ」
らんまは少しつまらなそうにキョロキョロ外を見ながら言った。

「本当にいつもおみやげありがとうね、良牙くん! おねーちゃんやお父さんも大
喜びよ!」
あかねはニッコリ微笑んでコーヒーを飲んだ。良牙は照れ隠しに頭をポリポリ掻き
ながら答えた。
「い、いやあ、いつもつまんない物ばっかりで・・・」
「まわりから攻める作戦は成功してるぜ、良牙!」
良牙のとなり、窓際の席に座るらんまは要所要所で良牙を力づけるような言葉をさ
さやきながらそれ以外はボンヤリ窓の外を眺めていた。
(・・・何かつまんねーな。やっぱやめりゃー良かったかな、こんなこと・・・)
「わぁ〜、大吉だって! ほら、乱馬、見てよ、スゴいでしょ!」
しばしの談笑が過ぎた頃、おもむろにテーブルの占い機で遊んでみたあかねは鬼の
首でも取ったかのようにはしゃいで見せた。
「へえ、珍しーじゃん。おめー、いつもは小吉ばっかだもんな」
「えとね、今はどれだけ気ままに振る舞っても大丈夫! 彼はいつもあなただけを
見つめています、ですって!」
あかねは意味有りげに占いの紙で口元を隠しながらチラッとらんまを見た。らんま
はウンザリしたように首を振って頬杖を突きながら窓の外へ顔を向けた。
「おめーだけ見てたら電柱にでもぶつかっちまうだろ! そ〜んな女に媚売るよー
なもん当てになんねーって!」
「・・・いーもん、大吉なんだから!」
不服そうにブスッとらんまをにらんだあかねは打って変わって良牙にはしゃいで見
せた。
「ねえ、良牙くんもやって見れば! 当てになんないならなんないで、けっこー良
牙くんも大吉とか出るかもよ!」
(・・・本気で鈍いな、こいつ)
らんまは相変らず窓の外を眺めながら心の中でウンザリと首を振った。
「・・・あ、べ、別に当てになんないって、気にしない、気にしない! ね、良牙
くん?」
あかねの慰めるような声にらんまはん? と振り向いた。良牙は深刻な表情で占い
の紙をジッと見つめていた。
「何だぁ、大凶でも・・・う!?」
らんまがからかうフリして慰めてやろうとのぞき込んだところがまさにその大凶が
出ていた。
(あなたは今日人生の奈落の底に突き落とされます。特にデートは絶対避けるよう
に・・・! なっ、何だぁ、これ!?)
愕然と良牙の手元を見つめていたらんまはプルプル震える良牙の手にハッと気づい
てあわてて慰めようとした。
「きっ・・・、気に・・・!」
「そーだ! こーしよ、ね、良牙くん? あたしのと交換すんの! そーすればプ
ラマイゼロで結局今日はいつも通り、でしょ? ね、ね、良牙くん?」
らんまが言いかけるより早くあかねがすまなそうに笑いながら良牙の紙を取り上げ
て自分のを良牙の手に握らせた。らんまはムッとあかねをにらんだ。
「あ・・・、あかねさん・・・! まさに天使だ!!」
良牙はジ〜ンと感動してそのあかねの手をギュッと握った。あかねは少し困ったよ
うに苦笑いしたが結局自分がむりやり良牙にやらせた占いなので止むを得ずそのま
まエヘヘと笑った。
「そっ・・・、そーお? エヘヘヘヘ・・・」
「何つっても『クラムボン』あかねだもんな。お優しーことで」
その光景にヒクッと頬を引きつらせたらんまはプイッと横を向いて皮肉たっぷりに
言った。
「へ、変なこと良牙くんに教えないでよねっ、乱馬!」
あかねはカッと赤くなりながら恥ずかしさをごまかすようにらんまに怒鳴った。

  2.悲しい夢
「なーに、もう帰る、乱馬?」
良牙をどかして通路に出たらんまにけげんそうにあかねが聞いた。らんまは良牙の
頭にポンと手を置きながら少し笑って答えた。
「エ・チ・ケ・ッ・ト・タイム! そーだな、おれが戻ったらもー出よーか?」
「そうね、もう夕方だし、あんまり良牙くん引き止めても悪いしね」
あかねはすまなそうにエヘヘと良牙に笑って見せた。良牙はあわててブンブン首を
振った。
「お、俺は今日はヒマだから別にいつまででもかまわねえぜ、あかねさん!」
「・・・後で公園行くからな」
その良牙の耳にコソッとらんまがささやいた。
「告白はそん時だ。今のうちにそれとなく当たり入れとけよ、な?」
「す・・・、すまねえな、わざわざそこまで気を回してもらって」
コソッと答える良牙にらんまは立ち去りながら手だけを『安心しろ』というように
振って見せた。

「・・・何て顔だよ、これ」
用を済ませて出ようとしたらんまはふと鏡に映った自分の顔を呆然と見つめた。そ
れはまるで恋人を取られた女のように深く思いつめたような厳しい顔つきだった。
「・・・」
洗面台に手を置いて深くうつむいたらんまはニッコリ微笑んで顔を上げた。
「・・・あいつの夢も今日限りなんだぜ。今日1日ぐれえ我慢しろよ、せめて最後
の一時ぐれえ最高の夢見させてやるんだろ?」
鏡の中の自分をピッと指差してらんまは1人うなずいた。

「・・・そ、その、あかねさん」
軽い話題で笑い合った後、良牙は急に深刻な顔でうつむいた。あかねは心配そうに
良牙を見つめた。
「なあに、良牙くん・・・? 悩み事なら何でも言って! あたし、できる限り良
牙くんの力になってあげるから!」
「あ、あかねさん・・・!」
良牙は驚いたように顔を上げた。あかねは元気づけるようにニッコリ微笑んで見せ
た。
「あたしはいつでも良牙くんの味方よ! 友だちだもんね、あたしたち!」
「・・・と、友だち・・・」
良牙はフシュル〜と気が抜けてしまった。ブンブン首を振って気を取り直した良牙
はフッと横を向いてボソッとたずねた。
「・・・乱馬、とはうまくやってるのか、あかねさん?」
「・・・え!?」
ギクッと顔を引きつらせたあかねはあわてて打ち消すように手を振りながら苦笑い
して見せた。
「やっ、やーねぇ! あ、あたしと乱馬ってただ単に親同士の決めた許婚ってだけ
だから、ね、ぜ〜んぜんない、そんなことないってばっ!!」
「ほっ・・・、本当なのかっ、あかねさんっ!?」
良牙は一気に勇気づけられてあかねの手をガシッと握った。あかねは良牙から目を
そらすように横を向いてポリポリ頬を掻きながら努めて他人事のように答えた。
「そ・・・、そーだと思うけど、あたしは・・・?」

「・・・男の夢は人を突き動かすものなのさ、ハニー」
トイレを出たらんまは不意に聞こえた声にん? と振り向いた。奥のテレビに映画
のラストシーンらしい画面が映っていた。霧煙る飛行場で軽飛行機に乗ろうとした
男が女に最後の別れを告げているシーンだった。
「あなたっていつもそう・・・。見えもしない遠くのことばかり憧れていたわね」
「・・・すべての男は遠視で、すべての女は近視なのさ、ハニー。だから理解して
くれとは言わない。君は君の幸福を追えばいい」
「何だ? 眼鏡屋の映画か、これって?」
らんまはそう言いながらもその画面に釘付けになってしまった。
「・・・あなた、男の夢は人を突き動かす、って言ったわね!」
回り始めたプロペラに乗り込もうとした男に女がエンジンの音に負けじと大声で叫
んだ。
「あたしならこうよ! 女の夢は人を癒すものだわ! どうしようもなく疲れたり
万が一ケガしたらお願い、ここに帰って来てね! いつまでも待ってるから!」
「・・・覚えておこう、ハニー」
指で帽子をクイッと上げてニッと笑って見せた男はそのままドアの中へ消えた。飛
び去る飛行機を見つめる女の背に『FIN』の文字が重なった。
「ふ〜ん・・・。そっか、エフアイエヌって映画なのか。今度あかねに借りさせて
見てみよっと」
首をコキコキ鳴らしたらんまはテテテと席へ戻って行った。
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