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投稿日時:1993/11/28 21:49 投稿者ID:QKM33822
#1234/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QKM33822)  93/11/28  21:49  (106)
小説>らんま「キッス・アゲイン」1 SAMWYN
★内容
【 キッス・アゲイン 】              小説 ”らんま1/2”

                                                  ID:QKM33822 SAMWYN

  プロローグ
「あ゛〜っ!?」
突然の乱馬の叫び声にあかねはギクッと身を引いた。
「なっ・・・何よっ、いきなりっ?」
「おめーなぁ〜・・・いくらブタだっつってもオスだぞっ、こいつっ!」
さて寝ようかとあかねがPちゃんを連れて縁側を通りながら何げにPちゃんの鼻に
キスした時に、タイミング悪く風呂へ行こうと乱馬が部屋から出て来てそれをしっ
かり目撃してしまったのである。
「なっ、何よ〜っ!? だ〜れかさんがしてくれないんだもん、ブタにするくらい
別にいーじゃないっ!」
「あのな・・・」
乱馬は途方に暮れてウンザリ頭を押さえた。
「んなことしてっと誰かれかまわずキスする尻軽女だと思われてっ、許婚の俺が恥
かくんだよっ! そんぐれーわかれよなっ、バカッ!」
「・・・あんたほどじゃないでしょ?」
ムカッときたあかねは皮肉たっぷりに答えた。
「あんたときたら、男も女も誰彼かまわずイチャイチャイチャイチャ・・・あたし
もういーかげんウンザリして来てんの。あたしだってこれぐらいしたっていーじゃ
ないっ!」
あかねはまたンチュッとPちゃんの鼻にキスして見せた。
「あ゛〜っ!? またしやがったな〜っ、てめーはっ!!」
ワナワナ震える乱馬を尻目にあかねはさらに何度もPちゃんにキスして見せた。
「誰かさんがしてくれない限り何度でもやってやるから! イヤならさっさと止め
れば?」
「このっ・・・!!」
乱馬は持っていたタオルをベシッと床に叩きつけた。あかねはギクッと凍ってジッ
と乱馬を注視した。
「わーったよ! 好きにしやがれっ、この浮気もんがっ!」
「!」
あかねの目が一瞬涙がこぼれそうなほど大きく見開かれたことに乱馬もPちゃんも
気づかなかった。あかねはフンッと乱馬から顔を背けて階段へと歩いて行った。乱
馬がムシャクシャした気持ちを静めるようにタオルを拾ったその時、
「・・・いくじなし!」
あかねが階段に足をかけたところで振り向いてジイッと乱馬をにらんでいた。しか
し、その目がむしろ言い知れぬ悲しみを訴えているように思えて乱馬はギョッとあ
かねを見つめ返すばかりだった。
「・・・あたしだって、女なんだから!」
その気まずい雰囲気にあかねもためらうようにうつ向くと、ボソッと言い残してト
タタタと階段を駆け登って行った。
「あかね・・・」
乱馬はしばし呆然と立ち尽くして誰もいなくなった階段を眺めていた。

  1.キスの味
「なあ、親父・・・。女にとってさ、キスってんっなに大事なのかなぁ?」
ふとんに半分身を入れた乱馬はふととなりに寝る玄馬にたずねた。玄馬はフッと目
を開けて遠くを見るような顔でつぶやいた。
「口吸い、よな・・・。母さんとわしは子供、すなわち乱馬、お前を生むために1
度したきりぞ・・・」
「・・・もーいい。親父に聞いた俺がバカだった」
フーッとため息をついてふとんに潜り込んだ乱馬にふと玄馬がつぶやいた。
「お前はどうじゃ、乱馬? お前も半分は女、下手な男よりはあかねくんの気持ち
もわかるのではないのか?」
「・・・男だよっ、俺は!」
乱馬は怒ったようにムスッと答えたきりだった。もう何も言わない乱馬に、玄馬は
フッとため息をついて静かに目を閉じた。
(俺はどうか・・・か。好きな男がいるわけじゃなし、わかるわけねーよな)
乱馬はそれ以上考えることもできず、また考える気にもなれず、やがて深い眠りへ
と落ちて行った。

 乱馬は夢を見た。夢の中で乱馬は女になって男ととっても楽しいデートをしてい
た。男の顔はなぜかいつも逆光でよく見えなかったが、とにかくらんまはその男を
心の底から愛し慕っているのはわかっていた。楽しみは時を速め、はや夕暮れ、落
ちかける陽の暖かい色に染まる世界の中の、家へと向かう真っ直ぐのびた一本道を
らんまは楽しかったデートを思い返しウキウキした心地で男の腕にすがりついて歩
いていた。
「じゃ、ここで」
「あ・・・」
不意に幸福の時の終わりを告げる男の声にらんまはハッと我に返った。ここで男と
別れなければならなかった。幸福は過ぎ去った時の中にのみあり、未来は今は闇の
中に閉ざされようとしていた。少しモジモジしながららんまはポッと頬を染めて男
を見上げた。優しく見下ろしてくれるこの男と明日も会える保証はなかったし、ま
た、もし会えても今日ほど幸福な時を過ごせる保証もなかった。
「・・・ねえ?」
「ん?」
「・・・キス・・・して?」
「・・・バカ!」
「お願い! それはおまじない・・・、幸せなこの瞬間に明日も入れますようにっ
て言うおまじないなの。してくれなきゃあたし・・・夜中にあなたの顔が思い出せ
なくなって泣いてしまうわ、きっと」
らんまはうるんだ瞳でジッと男を見つめながら、この不安と迷いを静めるためには
キスだけが意味があることを痛切に感じていた。
「仕方ない奴だなァ」
男はフッと笑ってらんまの上にかがみ込んだ。らんまはソッと目を閉じた、近づく
温もりをどんなストーブよりも暖かく感じながら・・・。

「してくれるのは嬉しいんじゃが、せめて女になってくれんかのう、乱馬?」
バシャッと冷や水を浴びせられてらんまはギョッと跳ね起きた。
「なっ、なっ・・・!?」
ハッと気づくと自分が八宝斉を抱きしめて限りなく顔を近付けていたりした。
「でえええっ!? 何やってんだあああっ、てめーは〜っ!!!」
らんまの反射的に繰り出されたパンチはさすがの八宝斉もよけきれず、ドゴッと畳
に叩きつけられてしまった。
「しどいのう、しどいのう、おぬしから抱きしめて来たクセにっ」
八宝斉は目をウルウルさせてヨヨヨと泣き崩れた。
「やめんかあああ〜っ、気色悪いっ!!」
ゾワワッときたらんまは強烈な蹴りでドゲッと八宝斉を屋外へとぶっ飛ばした。ハ
アハア肩で息を切ったらんまはとなりでビクビク寝ているパンダをギッとにらみつ
けた。
「何で止めなかったんだよっ、親父っ! 息子の貞操が危なかったんだぞっ!?」
『き、貴様がお師匠様に気があるとは知らなかった』
「あるわけねーだろっ、バッキャローッ!!」
看板もろとも庭へ蹴り出されたパンダはやれやれ、と首を振るばかりだった。
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