SIG るーみっくわーるど SIG るーみっくわーるど」は、漫画家 高橋留美子先生(るーみっくわーるど)の作品が好きな仲間が集まっているグループです。 るーみっく好きなメンバー間コミュニケーションのためのチャットや掲示板の提供、るーみっく系イラスト・小説・リンク集の公開などを行っています。 オフ会も不定期に開催されています。1992年6月にPC-VAN上で誕生した歴史あるグループです。
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投稿日時:1993/11/28 21:52 投稿者ID:QKM33822
#1235/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QKM33822)  93/11/28  21:52  (165)
小説>らんま「キッス・アゲイン」2 SAMWYN
★内容
  2.キッスしたいの
「・・・フンッ!」
朝風呂に入ってから乱馬が茶の間へ来ると、もうほかのみんなは食べ始めていた。
一瞬気まずげに乱馬をチロッと見上げたあかねは、しかしすぐにプイッと顔を背け
てしまった。
「・・・」
そんなあかねをジトッと見下ろした乱馬はいかにも不機嫌そうにドカッと座ると、
かすみの渡す茶碗を受け取りざまにガバガバと飯を食らい始めるのだった。
「・・・」
何度も繰り返されていることとは言え、そのたびに早雲とかすみ、そしてなびきは
顔を見合わせて力なく首を振るばかりだった。
「ま、その・・・と」
何か冗談でも言おうと開きかけた早雲の口をあわててかすみとなびきがパッと押さ
えた。何事かと2人を横目で見比べた早雲は、2人の目線が同じことに気づいて、
おそるおそるその方へと顔を向けた。
「・・・」
あかねがあふれそうな想いを込めて乱馬の横顔を、いや、その口をジイッと見つめ
ていた。
「・・・?」
おかずへと箸をのばした乱馬はジイッとこちらを見つめる早雲ら3人に気づいて、
スウッと顔を横へ向けたところがウットリと自分を見つめるあかねに初めて気づい
て、ウッと箸を噛みながらもたちまちカアッと赤くなってしまった。
「・・・なっ、何だよっ、あかねっ!」
「・・・え!」
ようやくハッと我に返ったあかねもまたカアッと真っ赤になってあわてて前を向い
た。
「あっ・・・、なっ、何でもないっ! あっ、あんたの口元に御飯つぶがついてる
な、って・・・!」
あかねは自分がどこを見ていたのかを思わず口走ってしまったためにますますカア
アッと真っ赤になって何も言えなくなってしまった。幸い乱馬はそのことに気づか
ず、何だという顔で自分の口元をまさぐった。
「は、早く言えよなっ、そーゆーことは! ・・・ん? 何だ、何にもついてねー
ぞォ?」
「・・・ついてる」
ジイッとにらむようになびきがボソッと言った。乱馬はあれ? という表情でまた
口元をまさぐりながら、不審げに聞いた。
「・・・? どこ? どこだよ、なびき?」
「ついてるでしょ? あんたの口に唇が?」
核心をズバリ言ってのけたなびきに、あかねはもう耳まで赤くなってバッと立ち上
がった。
「ごっ、ごちそうさまっ! あ、あたし、もう学校行かなきゃ!」
「何だよっ、俺まだ途中だぞっ!?」
ムッと見上げる乱馬にあかねはエヘヘと笑ってダッと茶の間を飛び出して行ってし
まった。
「ゆ、ゆっくり食べててっ! あたし、用事あるから、先行くからっ!」
「・・・せわしねー奴だなァ。ま、いつもの事だけど」
ボケッとあかねを見送った乱馬は改めてなびきに振り向いた。
「んで、どこに飯つぶついてんだよっ、なびきっ?」
「・・・かすみおねーちゃん!」
ウンザリと頭を振ったなびきは痛む頭を押さえるようにうめいた。乱馬がん? と
かすみに振り向くより早く、かすみのソッと繰り出すシャモジが乱馬の鼻をチョン
と叩いた。
「ほら、乱馬くん? 鼻のまわりに御飯つぶがい〜っぱいよ?」
「・・・へ? ・・・へ?」
ニッコリ微笑むかすみに乱馬はまるで訳がわからず呆然とするばかりだった。

「乱馬。ちょっと来い。話がある」
学校でもあかねは乱馬を避け気味で、そうかと思うと少し離れたところからジイッ
と見つめてたりした。かと言って、乱馬が理由を聞こうと寄るとすぐにプイッとふ
てくされたような態度を取る、乱馬には何が何やらまるでわからなかった。帰りも
あかねは先に帰ってしまい、乱馬がブチブチ言いながら帰って来ると、門のところ
に良牙が待っていた。

  3.キッス・アゲイン
「・・・何だよ、話って?」
道場の屋根の上、乱馬は暮れる陽を見つめる良牙の背中をジトッとにらみつけた。
「・・・はっきり言おう。昨夜、俺は天国を見た」
良牙は昨日の夜のことを思い出すようにポ〜ッと遠い目つきでつぶやいた。ムカッ
ときた乱馬はしかしあえてポケットに両手を突っ込んでやや皮肉混じりに言った。
「へえ〜・・・。そいつァ良かったなぁ、『Pちゃん』?」
しかし良牙はフッと笑って続けた。
「昨夜、ベッドに入った後もあかねさんは俺に数え切れないほどのキスをしてくれ
たぜ・・・」
さすがの乱馬もムッカ〜ッときて、バケツを手に良牙の背中にソロソロと寄った。
「だがなっ! ・・・何やっとんだ、貴様は?」
いきなり良牙が振り向きざまに手をバッと振ったので、乱馬はいざ持ち上げたバケ
ツの水を自分がひっかぶってしまった。らんまはごまかすようにキャピリンと笑っ
て見せた。
「ぎょ、ぎょ・う・ず・いっ! ンフッ」
「・・・ま、それはともかく、だ」
不審げにらんまをジトッと見下ろしていた良牙はフッと息をついて話を戻した。
「・・・俺にはちょっと苦過ぎるぜ、涙混じりのキスの味って奴は」
「・・・!」
ハッと良牙を見上げたらんまは、突然この角度が夢の中のそれに限りなく近いこと
に気づいてカアアッと真っ赤になってしまった。
「・・・どうした、乱馬? 顔が赤えぞ?」
不審げに聞く良牙に、らんまは考えるように組んだ腕の片方で口元を隠すようにう
つむいた。
「・・・知ってるよ、それぐらい」
「と、とにかく、だ」
良牙は何か尋常でない雰囲気をごまかすようにプイッと夕陽へ顔を向けた。
「俺はもう充分あかねさんとキスしてるわけだし、今さらお前が1回ぐれえあかね
さんとキスしたところでそれぐれえは我慢できるつもりだ。だから・・・キスして
もいいぜ、乱馬?」
「・・・え!?」
らんまは驚きにポカンと口を開けて良牙を見つめた。良牙はちょっとかっこ良過ぎ
るかもな、俺って、と少し頬を赤くしてムスッと夕陽を見つめていた。
「い・・・いーの? 良牙・・・?」
らんまはまた顔が熱く火照るのを感じながら、ドキドキする鼓動に声が揺れないよ
うにささやくように聞いた。
「ああ、かまわん」
「・・・良牙」
ソッと身を寄せて袖をキュッと握るらんまを何げに見下ろした良牙は、目を閉じて
顔を寄せるらんまの意図が一瞬つかめなかったが、次の瞬間には自分もカアアッと
真っ赤になることで初めてらんまの動きの意味を理解した。
「でえええええ〜っ!? なっ、何しやがるっ、貴様〜っ!!」
続く瞬間には打ち飛ばされて屋根に突き刺さるらんまを、良牙がハアハア肩で息を
しながらギロッとにらんでいた。
「だっ、だっ、だっ、誰が俺にキスしろと言ったっ!? 俺はあかねさんにしてや
れと言ったんだっ、バカ野郎っ!!」
「・・・え?」
一瞬愕然としたらんまは、何かものすごい恥ずかしさを急に感じて、ごまかすよう
にアハハと笑って見せた。
「じょ・・・冗談だよっ! ま、真に受けんなよっ、ヤだな〜!」
「・・・本当だろうな?」
良牙は寄って来るらんまにすかさず構えながらおそるおそる確認した。らんまは一
瞬間を置いてニコッとうなずいて見せた。
「ああっ! おれを信じろって、良牙! なっ? で、話ってそんだけなんだろ?
 じゃ、おれはもー戻るぜ、もーすぐ夕飯だかんな!」
緊張をほぐすように軽く体操してから駆け出そうとしたらんまの肩を−−一瞬ため
らってから−−良牙が引き止めた。らんまはドキッと凍りついた。
「あ、ちょっと待て、乱馬。俺が後で道場にあかねさんを連れて来るから、そこで
やれ、乱馬。誰ものぞかないように俺が外で見張っててやるから、それならいくら
貴様でも何とか出来るだろ?」
「あ・・・、ああ・・・、わかった・・・」
またもや心臓がドキドキ脈打つのを感じながららんまは何とかしてその気持ちを抑
さえようとした。しかし、耐えれば耐えるほど頭の中がボ〜ッとなってきて、つい
に耐え切れずにらんまはわずかに振り向いた。
「・・・予行演習・・・しねーか、良牙?」
「・・・貴様、もしかして俺が好きなのか?」
良牙の声と表情に侮蔑と嫌悪を感じ取ったらんまはサアッと引く血の気にあわてて
前を向いた。
「・・・じょ、冗談に決まってんだろ、バカッ」
「とにかく、夕飯が済んだら貴様は道場で待ってろ。それまで余計なことは一切考
えんじゃねえぞ? じゃあ行け、乱馬!」
ドンと突き放す良牙にらんまはホッとしながらも一抹の寂しさを感じた。
「・・・間接・・・キスなんか・・・!」
ふと立ち止って振り向くらんまに良牙はグッと握った拳をワナワナと震わせて見せ
た。
「あ・・・、なっ、何でもねェ、気にすんな、良牙。じゃっ、また後でな!」
ギクッとしたらんまはごまかすようにエヘヘと笑いながらあわてて屋根から飛び降
りたのだった。

「Pちゃ〜ん! どこ行ったの〜! 出てらっしゃいよ〜!」
妙にたまったストレスをブロックでも割って吹き飛ばそうとあかねが道着に着替え
て庭へ出た時、不意にPちゃんが飛び出して来て、ついて来いと言うようにあかね
をジッと見つめた。そのPちゃんを追ってあかねが暗い道場へ入り、電気のスイッ
チを入れた時にはPちゃんの姿はどこにもなかった。
「・・・変ねえ。確かにここへ入ったはずなんだけど・・・!」
中央まで来てキョロキョロ見回した時、不意に後ろで戸の閉まる音にあかねはハッ
と振り向いた。戸に寄りかかった乱馬が気恥ずかしげに鼻の横をポリポリ掻きなが
ら上目使いにあかねをジッと見つめていた。
「・・・あ〜ら? 何の用かしら、いくじなしさん?」
あかねは軽べつするようにジトッと乱馬をにらみつけた。ムッとした乱馬はその気
持ちを吹き払うようにフ〜ッと深呼吸をすると、突如バッとあかねを指差した。
「勝負だっ、あかねっ! 俺は今から力ずくでもおめーにキスしてやるっ! だか
らおめーも力の限り抵抗しろっ! もしちょっとでも手ぇ抜きやがったら2度とキ
スしてやんねーからそう思えっ!」
「!」
一瞬ポカンと目を見開いたあかねは、やがてクスッと笑ってバッと構えながらニッ
と乱馬をにらんだ。
「面白い! 受けてやろうじゃない、その挑戦! さあ! どっからでもかかって
らっしゃい!」
「よ〜しっ、行くぜええっ!!」
乱馬はダッとあかねに飛びかかった。
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