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#1236/3141 るーみっく☆わーるど ★タイトル (QKM33822) 93/11/28 21:55 (155) 小説>らんま「キッス・アゲイン」3 SAMWYN ★内容 4.バトル・キッス 「で〜いっ!」 あかねの怒涛の蹴りを乱馬はフワッとよけたが、あかねも普段から乱馬の勝負を見 慣れているのか、すかさず裏拳を打ち出す、乱馬はハッと転がるようによけて間合 いを取りながらスッと立ち上がった。 「・・・ふっ。腕上げたな、あかね」 「前のよーには行かないわよ! 覚悟決めてかかってらっしゃい!」 あかねの構えはその隙を気合いがカバーしていて、いつになく堅い守りだった。 「・・・なるほど、こいつァ本気で行かねーと、まず!」 乱馬の得意技の1つ、「会話の途中で突如攻撃」拳がすかさず炸裂した。 「くっ・・・!」 あかねはいわゆる「窓拭き」の技で乱馬の連続突きを防ぎつつ、クルッと身を回し ざまに強烈な後ろ蹴りを繰り出した。 「でぃりゃ〜っ!」 「ほっ!」 乱馬はその足に手をついて鉄棒のようにフワッと体を浮かす、しかしあかねは手慣 れたもので突如ガクンと床に腰を落とし、あわててクルッと着地しようとした乱馬 の足をブレイクダンスのような鋏み回し蹴りで捉えた。乱馬はそのままズッテ〜ン とひっくり返ってしまった。 「でえっ!?」 「ほらほらっ、どーしたのっ、乱馬っ!」 立ち上がってパンとほこりをはたいたあかねは再びグッと構えた。 「そんな手抜きの技で倒せるほど弱くないわよっ、あたしは!」 「・・・くそっ!」 ようやく乱馬の格闘魂に火がつき始めた。ムカムカする気持ちを抑さえるように立 ち上がった乱馬はスウッと極めて優美な構えを取った。 (・・・! 本気ね、乱馬? ならば・・・) 燃え上がる乱馬の闘気に負けないようにギュッと拳を握ったあかねは数歩すり足し て間合いを計ってから、ダンッと飛び出した。 「先手必勝っ、疾風爆裂拳っ!!!」 「・・・!」 乱馬の目がギラッと光り、あかねは吸い込まれるような腕の感触にギョッとした。 「くっ・・・!」 あわてて放った蹴りもフワッと浮き上がるような奇妙な感じにとらわれ、あかねが ハッと気づいた時には乱馬がその足をすくい上げるように両手を広げながら、あか ねの軸足の後ろに足を大きく入れていた。 「あっ・・・ああっ!?」 そのまま天地がフワッとひっくり返るような感じにあわてて受け身の体勢に入ろう としたあかねは、しかし乱馬の手足に妨害されて思うように動けないのにゾクッと した。 (こっ・・・このままじゃ頭から・・・!) 「きゃあ〜っ!!」 我知らず叫ぶあかねの声にギクッと我に返った乱馬は、自分がしようとしたことに 愕然と気づいてあわててあかねの服の袖をキュッとつかまえた。 「!」 天地がすべるような異様な動きが一瞬止まり、あかねはほとんど反射的にダンッと 身を回して乱馬を逆一本背負いで投げ飛ばしていた。 「でえええ〜いっ!!」 「ぐはっ!?」 乱馬は頭から道場の壁に突っ込んでしまった。 「・・・やっぱり本気で打てないようね? 言ったでしょ、そんなんじゃあたしは 倒せないって」 あかねは荒れる息を整えるように上着を直して帯をキュッと締め直しながら、壁際 に座り込んでうめく乱馬を見下ろした。 「くっ・・・」 フラフラする頭を叩いて気を取り直しながらキッとあかねをにらんで立ち上がった 乱馬は、そばにあったバケツの水をバシャッとかぶった。 「・・・ハンデがあったんじゃ今イチ本気になれねーからな、これでおあいこだ、 あかね。もう容赦しねーからな、覚悟しろよ!」 「男の時でも勝てないのに女になって勝てると思うの? いーわ、さあ! どっか らでもいらっしゃいっ、乱馬っ!」 あかねは威嚇するようにバッと手を上げてグッと構え直した。頬に伝う水しずくを グッと拭ったらんまは壁を蹴ってダッと飛び出した。 「行くぜえっ、あかねっ!!」 5.口づけキューピッド 「くっ・・・!」 「ていっ!」 らんまの突きをあかねは腕で叩き落とし、らんまは逆にその反動を使って意表を突 くような回し蹴りを打ち出す、あかねはその蹴りを飛び込むようによけつつらんま の脇腹に突きを食らわす、軸足をキュッと内にひねりつつらんまは突如それまでと は逆の回転であかねの腕に腰を乗せ前足をあかねの下腹へと突き込む、あかねはダ ンッと後ろ足で床を蹴ると同時にその足を自分の前足へぶつけて跳ね上げかろうじ てらんまの攻撃をかわす、かすめ飛ぶ竜のごときらんまの拳といななく馬のごとき あかねの拳は紙一重の差で均衡を保っていた。 「・・・!」 しかしそれも束の間のこと、あまりに巧妙ならんまの動きについにあかねの腕が捕 えられてしまった。 「くっ・・・ああっ!?」 そのままスウッと背後に回り込むらんまにあわてて振り向こうとしたあかねは生じ た隙にもう一方の手も捕えられてそのままダンッと壁に押しつけられてしまった。 「・・・おれの勝ちだな、あかね?」 ジッと見つめるらんまにあかねはハアハア荒い息を止めようとしながらあえぐよう に答えた。 「く、悔しいけど・・・認めるわ、今は」 「あかね・・・」 らんまは高まる鼓動を抑さえるように頭の中で繰り返し念じながら上気した顔をあ かねへと近づけた。 (おっ、落ち着けっ、早乙女乱馬! これは勝負なんだっ、これさえ決めれば、こ れさえ・・・!) 「・・・」 あかねは今はドキドキする胸が勝負のせいなのか、それとも別な理由からなのか頭 がボウッとしてわからなくなって来た。不意に、そんなあかねの胸にらんまの胸が ギュッと押しつけられて来た。 「・・・! ・・・待ってよ、乱馬?」 「うるせー、もう勝負はついたんだ、黙って・・・!」 あかねが2人の近づく唇の間にスッと手を入れた。キョトンとするらんまをあかね がジイッと真顔でにらんでささやいた。 「・・・女同士じゃ入らないわよ、キスの内に?」 「!」 らんまは唖然としてしまった。自分が女になっていたことに言われて初めて気がつ いたのだった。 「それとも女同士でしたいわけ、あんた?」 からかうように真顔で聞いたあかねはそう言うとクスクス笑い出してしまった。ら んまは恥ずかしさにカアッと赤くなってポリポリ自分の頭を掻くばかりだった。 「い、いや、そ、そーゆー訳じゃ・・・ねーけど・・・」 「それとも今からかすみおねーちゃんにお湯沸かしてもらう? それとも・・・あ たしは別にどっちでもいーのよ、ほんと」 あかねはもうほとんど冗談のようにクスクス笑いながら言って、フ〜ッと満足げな ため息をついた。らんまは何をどうすればいーのかさっぱりわからなくなって、た だあたふたと手を動かすばかりだった。 「い、いや、あ、お、おれは、その・・・そお?」 「今は、ね! ・・・あっ、Pちゃん! どこ行ってたのよ〜? 探してたのよ、 あたし!」 ニコッと微笑むあかねにらんまはキュンッと胸が鳴って、そのままクラクラあかね に倒れかけたところが、あかねは道場の入り口から入って来たPちゃんに気づくと らんまの前をスッと抜けて行ってしまった。 「・・・はぁ。ダメだァ、やっぱ・・・」 らんまは一気に気が抜けたようにハ〜ッとため息をつきながら壁に手をついてうな だれてしまった。その時、 「ら・ん・ま!」 「ん〜? あんだよ、あか・・・!」 あかねの悪戯っぽい呼び声にらんまがうさんくさげに振り向いた刹那、グイッと突 き出されたPちゃんの鼻がらんまの開きかけた唇にブチュッと押しつけられた。 「!!!」 らんまとPちゃんはあまりに信じ難いこの突然の出来事にただ呆然と目を見開いて 見つめ合うばかりだった。 「Pちゃんとなら平気でしょ、いくら乱馬でも、ネ?」 あかねの声とともにスッと離されたPちゃんに、ようやくらんまも我に返ってたち まちボッと耳まで真っ赤になってしまった。らんまはもはやPちゃんの顔すら直視 出来ず、モジモジと指を噛んで横を向くばかりだった。 「・・・」 「ん? ちょっと、どーしたのォ、Pちゃん!?」 PちゃんはPちゃんで、しばし呆然と目を見開いていたかと思うと、突然ジワッと 涙ぐむなり、あかねの胸にヒシッとすがりついてブヒヒ〜ンッと泣き出してしまっ た。 「あ・・・、わ、わりい、Pちゃん」 らんまはあわてて苦笑いしてすまなそうにPちゃんに手を振ったのだった。 エピローグ 「ほらァ、もう泣きやんでよぉ、Pちゃんってば!」 腰が抜けたとか言って道場にペタンと座り込んでしまったらんまを残して、あかね はPちゃんを胸に道場を出た。母屋への通路を歩きながらあかねは困ったように今 だ泣き続けるPちゃんをあやすのだった。 「ねえ、Pちゃん? もっと乱馬とキスしてもいーのよ?」 優しいあかねの言葉にしかしPちゃんはゾゾッと青ざめた顔でブンブン首を振るば かりだった。 「だって、ね・・・いーよね、これぐらい?」 不意にあかねが悪戯っぽくクスッと笑いながらンチュッとPちゃんの鼻にキスをし た。たちどころにPちゃんは静かになってウットリとあかねの胸に安らいでしまっ た。一抹の不安を残しつつも、そこから離れられない自分を痛感するPちゃんなの であった。 【 キッス・アゲイン 】終わる