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#1329/3141 るーみっく☆わーるど ★タイトル (CHM88424) 94/ 1/13 1:18 ( 79) BD大会>「劇場版うる星2」の危険性。 NIFTYより ★内容 【NIFTY-Serveより転載12】 >- FANPLN MES( 4):るーみっくわーるど(8)高橋留美子の部屋 - >00167/00173 NCB01052 L.WEDDING. BD大会>「劇場版うる星2」の危険性。 >( 4) 94/01/12 23:42 もう一つの感想は、この映画の持つ意味そのものについてです。完結篇が公開 された際に当時の落合プロデューサーが書いた本の中で「この映画はうる星とそ のファンを決定的に変えてしまった」と否定的なニュアンスで述べていたのを読 みましたが、当時はこの言葉の意味が全く理解できませんでした。完結篇の内容 にアニメファンの一人として物足りなさを感じた時期だったのでむしろ反発を覚 えたものでしたが、歳月が流れ当時の落合氏と同じ年代に近づくにつれ、その趣 旨が見えてきたような気がします。 巨大なカメに乗った友引町、永遠に止まった時間、限られた人間と場所にだけ 与えられた「生」。面堂がいくらひねっても出なかった蛇口をラムがひねったら 水があふれ出す。全てにラムが中心であることに疑問を抱いたりあたるがちょっ かいをかけた人物は石の柱となって退場。夢邪鬼が作ったのはそんな世界でした。 夢邪鬼はそれがラムの望んだ結果だと言うのですが、しかし、 いつまでもう・る・せ・い・や・つ・らと楽しく過ごしたい。 ........ これはラムの夢であると同時にあの当時スクリーンを見ていた人々全てに共通す る願いだったはずです。それを押井監督は舞台のセット(つまり「作り物!」) という形で目茶目茶に壊したあげく、「あの人たちとつきあうのは並大抵の事や あらへん」と半ば開き直ったセリフを夢邪鬼に喋らせています。夢と現実の境目 がはっきりしない映画ですが、見る度にこう問われているような気がするのです。 高橋留美子氏の「うる星」の世界は所詮作り物で、 そんな世界は夢の中でも成り立たない。 何故なら諸星あたるはそれを受け入れずに逃げたじゃないか。 あんさんはそれが永遠に続くことを望むのかね? この文章のタイトルに「危険性」と書きました。つまり映画としてのうる星2 を考えてゆくと、原作の作品世界を破壊する結論も(可能性の1つとして)導き 出されると思うのです。強烈な説得力を持つ映画だけに原作ファンは完全な別物 として捨て去る事ができません。しかし、その思想を支持すると原作の作品世界 との矛盾が広がってしまう。高橋留美子氏のうる星やつらは本来こんな内向きで 難解な世界では無いのに、その後の劇場版2作−特にうる星4は自閉的とも受け 取られかねない世界に終始しているように私には見えますし、押井うる星の復活 を望んだ多くのアニメファンも影響を受けたスタッフも内向きの袋小路に迷い込 んでしまったのではないかと。冒頭に掲げた落合プロデューサーの発言はそのジ レンマを指して言ったことではないか?と思いますし、その後完結篇やIMD等 の映画がTVやBDを通して築いた押井うる星の世界の多くを捨てて原作の解釈 に従った内容に収まったのもその危険を感じた結果かな?と考える事もあります。 アニメファンの中からは不満の声が出ましたが、押井うる星の世界に戻ることは 原作を「唯一の世界」と見る限り絶対に認められないのかもしれません。 ただアニメファンの一人としては、原作を消化する上でそこで示された作品世 界を掘り下げてその描かれない部分まで踏み込む意欲が無いと、映像としての面 白さを感じることはできません。その手法が妥当であったか否かは別にしても、 押井うる星が他の原作付きアニメと決定的に違ったのは原作の作品世界をも侵略 するほどの猛烈なパワーと作画や動きなど細部の“こだわり”で、決して原作を 再現させて面白いかどうかだけのレベルではなかったと思うのです。「愛とさす らいの母」やこの映画に熱狂的なファンが付いたのはすなわち、 コミックとアニメは違うのだ! という思想を受け入れた結果だと思いますし、落合氏があくまでも原作の視点か らそれを充分に感じ取れなかったように自著から受け取れることが、むしろ私は アニメうる星の終わりを早めたのではないか?と思うのです。 あと、BDの唯一かつ最大の遺産は「スタジオぴえろ」という会社組織ではな いか?とも思います。うる星を降りた後、押井監督を欠きながらもオリジナルの 魔法少女シリーズを通して描いた繊細なキャラクターの心理描写とか、のらくろ クンやおそ松くんなどで描いた原作を上手に料理しながら暴走する強烈なギャク のパワーとそれを支えた優秀な作画陣などは(スタッフ的に後を継いだ訳ではあ りませんが)うる星の影響が良い伝統として残っているのかな、と感心しながら 見ていたものです。だから、BDは高橋留美子作品としては決してプラスの方向 には働かなかったけれど、アニメの表現の可能性を広げたという意味では非常に 価値のある映画ではなかったかと、いまはそう考えています。 最後に、色々書きましたが私自身はこの映画は大好きです。全てのうる星の映 画でも最も好きな作品です。ただ、それは前に長々と書いた押井監督の不条理的 な内容ではなく、面堂の水道のシーンで幸せだと笑うラムの笑顔はその前にも後 の映画にも無いものだったからです。たとえ夢の中の笑顔であったとしても。 L.Wedding : NCB01052 NIFTY_Serve