![]() |
#1384/3141 るーみっく☆わーるど ★タイトル (QKM33822) 94/ 1/25 23:17 ( 81) BD大会>BDの構造・追補 SAMWYN ★内容 ☆チャイムについて 冒頭の「針のない大時計が鳴らす3回のチャイム」と、エンディングの「針 のある大時計が鳴らす3回のチャイム」の他に、チャイムはあと2ヵ所で鳴っ ているのですが、その2つもまた対応しているらしいことがわかりました(^^) 。 その最初の方は、おそらくそこが時間的・ストーリィ的にBDの折り返し点 にあたると思われるのですが、あたるたちが4階校舎から脱出する間際、それ までかかっていた「故障中」の札が落ちて、大時計に針がないのが判明する場 面です。ここではチャイムは「2回」鳴らされます。 後者はもちろん、最後の最後に鳴る「5回」のチャイムです。この時、針は 「7時」を指しており、チャイムの数が「2回」足りないのですが、その「2 回」が上の部分へ飛んでしまっているわけですね(^^)。 ☆大時計の意味 大時計は、前半は「故障中」なわけですが、後半部との対応およびラストで は針があることから考えて、前半は「針がある」状態、後半は「針がない」状 態を表現していると取ってさしつかえないものと思われます(^^)。 当時から、うる星やつらには「永遠の夢」を望むファンと、「あたるとラム の愛の完成」を望むファンの、2大流派があったのであろうと私は推測するの ですが、この2つの大時計は明らかにその「2つの主流的うる星やつら観」を 表わしています。つまり、方や「時間的発展」を望み、方や「無時間的永遠」 を望んでいたわけです。そして、このBDの展開および、映画公開直後に押井 監督のもとに来た手紙のほとんどが「なぜラムとあたるをキスさせなかったの か」という内容のものであったらしいことから考えて、前者が最終的に優勢に なったものと思われます。 ☆BDにおける批判 押井監督はこのBDでそうした流れを巧みになぞって見せたわけですが、押 井監督ご自身はどちらにも疑問を抱いておられたようです。それで、BDの中 では両者はまったく同じ比重で扱われています。いや、それどころか、両者は 同じ1つの何かの表と裏に過ぎないのだ、とすらされているのです。 さて、問題は、その批判がどの程度深刻なものなのか、ですね(^^;。一番軽 い取り方では「どっちも同じうる星じゃないか、お互い攻撃し合ったり批判し 合ったりせずに、結局何だかんだ言ってもみんなうる星が好きな人たち同士、 仲良くやろうよ」になります(^^)。一方、もっとも深刻な取り方では「みんな うる星をネタに勝手に盛り上がっているだけで、誰もそれが本当のうる星なの かどうか知りたいとすら思わないのだ、そんなのは本当のうる星なんかじゃな いぞ!」と、かなりニヒルなものになってしまうのです(^^;(今まで私が仮定 的テーマとしていたのがこの読み方です(^^;)。 おそらく、すべてのうる星やつらファンは前者であって欲しいと思われるこ とでしょう(^^;。結局、どっちになるかは当時の押井監督がどのような状況に 置かれていたかでほぼ決まるのですが、ラストの夢邪鬼ののんびりした感じか らしても、押井監督は、少なくとも「この批判さえ受け止めてもらえればすべ ては良い方向に変わるだろう」と、BD完成直後は思われていたように私には 感じられます(^^)。ところが・・・ ☆BDはマンダラである 先に書いた手紙のことからもわかるように、それはあまりに楽観的な期待に 過ぎなかったのです(--;。押井監督が当時置かれていた状況の深刻さは、はか らずもBDの構造そのものの中にありありと表現されているのです。 BDはとても美しいシンメトリック構造を持っています。あたかも結晶のよ うな、あるいはマンダラのような−−−ところが、ユング心理学では、誰かが そうした構造を作るとすれば、そうした構造を作ることで心理的満足感を得ら れるのであるならば、「彼は発狂寸前の極めて深刻な危機的精神状態にある」 とみなされることになるのです。つまり、BD製作時の押井監督はそこまで追 い込まれていたからこそ、BDのような美しい結晶を作り出すことが出来たの です。 「良い方向」にさえ変わっていれば、押井監督もBDを補償する作品を作れ たことでしょう。しかし、事態はまるで変わりませんでした。否、むしろファ ンの対応は、押井監督をしてアニメうる星やつらを降りることを決意させるほ ど(あるいは、そうした勧めを受け入れてしまえるほど)に「救い難い」もの だったのです。 そういうわけで、補償されずに残されたBDは結局、「もっとも深刻なもの ですらまだ甘いと言えるほどに」致命的なファン批判を内包することになって しまったのでした。 ☆終わりに 最後のチャイムは「誤解」を示し、そして中心点の2度なる大時計には針が ない−−−「永遠の誤解」、それがうる星やつらの最良の映画であるとは、何 という皮肉でしょう。もちろんBDはただの「楽しい映画」としても一級のも のではありますが、その陰には押井監督その他の方々の壮絶な苦闘があったこ とを忘れてはならないと思います(;;)。 SAMWYN