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#1512/3141 るーみっく☆わーるど ★タイトル (QEG72756) 94/ 3/ 9 23:30 (136) 考察>良牙はいい奴です。今は…。 飛鳥 杏華 ★内容 前回の私の考察は、良牙ファンの方にはちょっとショックだったかもしれません。 でも、別に良牙が悪人だと言ってるわけじゃないんです。むしろ、思いっきり善人 ですね。私も、どっちかというと、乱馬より良牙の方が人間的(半分ブタですが) に好きですから。(笑) まあ、「らんま」の中に読者批判が見えると指摘しているのは、何も私だけじゃ なくて何人かいるわけで、私自身にしても、他者の指摘を聞いてから見えるように なってきたわけですが、この手のことを指摘する人のほとんどは、恐らく批判読者 の象徴としての先鋒は、珊璞であるという見方をしていると思います。 珊璞はその外見がラムに似ている。すなわち、ラムを表す記号をもっていて、乱 馬の嫌いな猫に変身する。しかも、あかねにかわってヒロインの座を奪おうとして、 いろいろやっている。「剛力ソバ」の話の冒頭などは実に象徴的ですね。 私も、最初は珊璞の登場あたりから批判読者への攻撃が始まったのだと考えてい たんです。ところが、以前UPして、その後が出てこない私の考察「らんま完結」 の第2回として九能から良牙の登場までを書くために、考察を進めていたときに、 良牙に響子とラム、すなわち「めぞん」と「うる星」を表す記号が見えてきた。そ して、前回のMSGのような図式が成立しうることが見えてきたんです。ですから、 去年の夏過ぎですね。これに気づいたのは…。 私としてもこれは驚きでした。まさか、こんな早くから…、と疑ってみたんです が、図式としてはきれいに収まってしまうんです。(^_^;) しかし、考えてみれば、 「うる星」を(読者の側からみれば、あまりにも突然に)終らせてしまった時点か ら、それに対する批判があったということは想像に難くないですね。 そして、愛する「うる星」を奪われてしまったファンの中の一部の強硬派が、頭 ごなしにけなしてやろうと待ち構えていたんじゃないかということも考えられます。 そして、まだ滑り出しで海のものとも山のものともつかない状態の「らんま」に、 かつての「うる星」や「めぞん」の完成されたノリを求めたために、そのギャップ に苦しんでしまった人たちの不満…。 そうしたものが良牙というキャラを形成して、「らんま1/2」の初期路線(あ かねの長い髪)をバッサリと斬ったのではないかと…。 恐らく、良牙を批判読者の先鋒として位置づけているのは私ぐらいなもんじゃな いかと思います。それだけ、良牙はその後「センチでいい奴」に変わって行ってし まったってことです。今の良牙を見ていると、とてもそんな恐い記号を背負ってい たなんて想像できませんからね。(笑) あかねの断髪については、HRさんが引用したインタビュー記事(高橋留美子ロ ングインタビュー「私の夢の日々」 少年サンデーグラフィック・スペシャル う る星やつら 完結篇(以下略)」にけもさん本人の弁が載っています。この記事は、 私も考察の際に好んで用いるもので、当然その辺の記述にも目を通しています。 ちょっと引用してみると、 > 連載が始まると、ヒロインのあかねという女の子に悩まされてしまった。気持 >ちがイマイチわからん。描きづらい。どうやら髪型に原因があるらしいというこ >とに気づいて、”えーい! 切ってしまえ!!”と、あかねの髪をバッサリとや >ってしまった。これであかねのキャラが完ペキに立ったといえないのが辛いとこ >ろなんですが(笑い)。 こうして、作者自身の弁が出されている以上、これが正しいと見るのが普通でし ょう。しかし、この言い方…、どうも抽象的だと思いませんか? なぜ、髪形に原 因があるのか? もし、作品の裏側で読者批判を始めていたとして、それを「私は、裏で読者批判 してます。」なんて口に出す人はまずいないでしょう。それじゃ、裏じゃないです からね。(笑) これに関しては、最近の海千拳について乱馬が言った言葉という のが、実に意味深なんですね。 「海千拳は、見えちまったら、意味がねえんだよ。」 この海千拳こそ、けもさんが作品の裏に込めている読者批判を象徴する技なので はないかとにらんでいます。これは、表向きには「コソ泥」の極意ということで決 着がつけられていましたが、恐らくカモフラージュですね。 見えないようにこっそりと技を仕掛け、気づいたらダメージを受けている。足元 をすくわれて、ひっくり返されている。身ぐるみはがされて、さらしものにされて いるという恐ろしい図式がそこに見てとれるのです。 つまり、このあかねの断髪に関する弁は、うそではないかもしれませんが、ある 種のカモフラージュだったのではないかと…。 同じインタビュー記事の中に、このような下りがあります。 > でも、週刊連載が終って1年近くたつから、そろそろみんな夢から醒めてもい >い頃じゃないかなーと。 このインタビュー記事の取材は、1987年の年末です。この年の1月に「うる 星」の連載が終了して、1年がたとうとしている。しかし、それでも一向に「うる 星」という過去の夢から醒めようとしない読者たちがいたことを、これは暗に示し ていると言えるでしょう。 過去の作品が好きだと言い続ける人がいても、それは別に不思議なことではあり ませんすが、それをあえて指摘しているように見えることから考えて、その夢への 固執ぶりが、ただものではなかったんじゃないかと想像できます。 そして、けもさんはこれにつづけて、こう言い放っている。 > 私は前にも話した通り、しっかりビリオドを打っている。以前は、『うる星や >つら』の何巻の何話目のどこのコマに何々が描いてあると、全部暗記していたん >ですけれど、今ではすっかり忘れてしまいました。 表向きには単に記憶が薄れたという話のように読めますが、前の言葉とつづいて いることを考えると、非常に辛辣な意味にもとれますね。(^_^;) つまり、「うる 星」に固執して、「うる星やつら」を返せと騒いでいる読者たちに対して、「いい 加減に、夢から醒めたら? どんなに騒いだって、『うる星やつら』は終ったんだ から。もう描かないんだから…。」と突き離しているという風にも見えるのです。 先ほども書いたように、このインタビューは1987年の年末に行われています。 作品の進行状況で言えば、ちょうど「格闘新体操編」を描いていた時期です。珊璞 が登場したのが、1988年の15号(3月9日発売)ですから、それより以前に けもさんは、夢から醒めようとしない読者(主に「うる星」ファン)たちに悩まさ れ始めていたのではないかということが、このインタビュー記事から推定できるの です。 良牙の登場が1987年の45号(10月7日発売)ですから、執筆時期として は9月20前後、構想も含めればさらに前になるでしょう。実質的な執筆開始から、 2カ月足らずというわずかな期間ですが、かつての「うる星やつら」の爆発状況を 考えると、夢から醒めようとしない「うる星」ファンのパワーは相当なものであっ たと想像できます。これが、「うる星」完結の直後からつづいてたとすれば、この 時期に登場した良牙に批判読者の属性が与えられたとしても、決してありえないほ ど早いとは言い切れないのではないかと思うのです。 しかし、良牙は変身後、実にいい奴に変わって行きました。「センチでいい奴」 というのも、けっして手前味噌ではないなと…。まあ、あたまに「バカ」がつくほ ど根が正直で、人の言うことをすぐに信じてしまう。 パンスト太郎があかねをさらって、それを救出に向かったときも、一緒に来た珊 璞と沐絲が、実は鬼畜な計略を秘めていたにもかかわらず、友情という言葉を口に したとたん、「じ〜ん」と感動してしまったり、貧力虚脱灸で弱くなってしまった 乱馬が、よってたかってやられているときに、1人、乱馬をかばって立ちはだかっ たり…。良い子ちゃんに対しても、良き兄貴になろうと努めていたし、許嫁ちゃん のときも、今度のあかりちゃんのときも、本気で自分のことを想ってくれる(許嫁 ちゃんの場合は疑問符がつきますが)相手を非常に大切に思うところがあって、本 当に憎めない「いい奴」なんですね、今の良牙は…。 しかし、いい奴がバカを見てしまうというのがまた、るーみっく作品の特徴だっ たりもするわけで、そんな良牙くんに春のきざしが見えたのは、喜ぶべきことなん だろうと思います。 QEG72756 飛鳥 杏華