SIG るーみっくわーるど SIG るーみっくわーるど」は、漫画家 高橋留美子先生(るーみっくわーるど)の作品が好きな仲間が集まっているグループです。 るーみっく好きなメンバー間コミュニケーションのためのチャットや掲示板の提供、るーみっく系イラスト・小説・リンク集の公開などを行っています。 オフ会も不定期に開催されています。1992年6月にPC-VAN上で誕生した歴史あるグループです。
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投稿日時:1994/ 5/29 2:21 投稿者ID:QKM33822
#1654/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QKM33822)  94/ 5/29   2:21  (181)
小説>らんま「UMA」1 altjin
★内容
【 UMA 】                   小説 ”らんま1/2”

                                                  ID:QKM33822 altjin

  プロローグ
「・・・ユニコーン?」
借りた辞書を持って部屋を出ようとしたあかねは、なびきがふと言った言葉に怪訝
そうに振り向いた。
「ほら、一角獣のことよ。角の生えた白馬の・・・」
「知ってるわよっ、それぐらい! どーゆーことよ、ユニコーンに気をつけて、っ
て・・・?」
あかねはムッと聞き返しながらベッドに座るなびきの前に腕を組んでズンと座り込
んだ。なびきはしかしあかねの問いには上の空で早くも捕らぬ狸の皮三畳じきを始
めていた。
「いわゆる『UMA』、謎の未確認動物って奴よね、やっぱり? お金を取ってテ
レビ局に売るべきか、お金プラス後世まで残る名声で大学に売るべきか・・・。あ
たしがマネージメントするにしても飼育費がバカにならなさそうだし・・・」
「・・・ウ・マ?」
聞き返すあかねにようやくなびきはムッと顔を下ろした。
「あたしはユーマって言ったわよ? 横着してあたしのセリフ読んだでしょ、あか
ね?」
「と・に・か・く!」
確かにあかねは横着した。おまけに読み間違えてしまった恥ずかしさを隠すように
わざと怒りながらあかねは部屋は出て行ったのだった。
「ウマは乱馬1人で十分ですっ、あたしは!」

  1.清らかな乙女
「・・・? 何の騒ぎ、お父さん?」
あかねが宿題を終えて茶の間へ来てみると、早雲と玄馬が町内会の会長と何やら話
し込んでいた。その緊迫した面持ちに思わず出たあかねの問いにかすみが答えた。
「あら、あかね! それが大変なの! ユニコーンが出没して、町内の人がもう何
人も襲われたんですって!」
「・・・ほんとに?」
あかねは唖然と聞き返した。
「・・・で、これが証拠写真です」
一方、早雲と玄馬は会長の出した数枚の写真を深刻な表情で見つめていた。
「う〜む・・・。これは・・・」
それはすべて、顔をこわばらせた少女に身をすり寄せるユニコーンの、とてもほの
ぼのとしたスナップ写真だったりした。
「あるいはご存じかと思いますが、ユニコーンはまだ清らかな少女にだけはなつく
のです! 捕獲しようとした男たちは案の定みなその角で突き飛ばされ、もしやと
娘たちに撮らせてみたのがこの写真なのです!」
会長はなぜか怒涛の涙を流しながらあえて解説した。
「しかしユニコーンの暴れっぷりを目の当たりにした娘たちはこれが精一杯、そこ
で一癖も二癖もある暴れん坊ぞろいの3人娘を抱えるお宅なら、と・・・!」
「あたしだけですっ、暴れん坊はっ!」
あかねが一応顔を赤らめながら会長の頭に肘打ちを食らわせた。早雲はそれをクー
ルに眺めながら言った。
「やめなさい、あかね、やってくれるかね?」
「どっちなのよっ!」
あかねがそのよくわからない問いに苦笑いしながら聞き返した時、襖をガラッと開
けて、かすみに頼まれて夕食の買い物に行っていた乱馬が帰って来た。
「ただいま〜! あの・・・何かなつかれちゃって、ついて来ちったんだけど、こ
いつ・・・」
乱馬のとなり、乱馬に身をすり寄せながらそのユニコーンも入って来たのである。

「どわあああ〜っ!?」
たちまち茶の間はパニックに陥った。乱馬があわててつかみ止めた時にはすでに会
長は庭の彼方に突き飛ばされ、玄馬と早雲はかろうじて天井に張りついて、下から
にらむユニコーンをこわごわ見下ろす有り様だった。
「乱馬く〜ん、頼むっ! 早く追い出してくれっ!」
早雲の必死の哀願に、乱馬はユニコーンの頬をムニュッとつかんで自分の方に振り
向かせた。
「こらっ! 何だって急に暴れるんだよっ! よそ様の家へ自分から入っておきな
がら暴れるなんて最低な奴のやることだぞっ!」
「へえ〜・・・」
ジトッとにらむあかねと言葉を失って唖然と見つめるかすみをよそに、ユニコーン
は優しく乱馬をジッと見つめると、クゥ〜ンと鳴いてその顔に頬をすり寄せた。
「ほら、おじさん、もー大丈夫だぜ! 根はとっても優しい奴だから、さ!」
乱馬がニッコリ見上げても早雲と玄馬は必死にブルブル首を振るばかりだった。
「あ、あかねっ、訳を説明してあげなさい!」
「ん〜・・・」
うさんくさげに乱馬とユニコーンのほのぼのしたやり取りを眺めながらあかねはポ
リポリ頭を掻いた。
「あのねえ、乱馬? それはユニコーンって言って、その・・・まだ清らかな女の
子にしかなつかない・・・はずなの。それが何であんたに一番なついてるのよ?」
「・・・なっ!?」
愕然と身を引いた乱馬はヒクッと頬をひくつかせながらユニコーンの頭をペンペン
叩いた。
「ほお〜・・・。するってーと何か、おめーは俺が『一番清らかな女の子だ』、と
そー言いてーわけか?」
ユニコーンはニコッと笑ってその手をペロッとなめた。乱馬のこめかみに青筋がプ
ツッと浮き出た。
「乱馬く〜ん! そんなことはどーだっていーから、早く家から追い出してくれな
いかねぇ〜?」
柱につかまる腕が痺れてきたのか、早雲が一層哀願するように訴えた。
「言われなくても・・・」
ニヤリと笑ってスッと立ち上がった乱馬は、ポキポキ指を鳴らしたかと思うといき
なりバッとユニコーンに飛びかかった。
「即刻つまみ出してやるぜえっ!!」
しかし、ユニコーンはサッとかわすとかすみの後ろに逃げ込んで、その背中越しに
悲しげに乱馬を見つめるばかりだった。
「てめー、卑怯だぞ! 男なら堂々と闘えっ!」
さすがにかすみに飛びかかるわけにも行かず、乱馬はユニコーンをグッと指差しな
がら怒鳴るしかなかった。乱馬の後ろのあかねが腕を組んでヒクッと頬をひきつら
せながらうめいた。
「あんたが言っても説得力ないわね、全然」
「・・・乱馬くん!」
その時、不意に年に1度あるかないかと近所で評判のかすみの険しい表情が乱馬を
にらみつけた。
「無抵抗の優しい馬さんをイジメる方がよっぽど男らしくないわよ!」
「で、でも・・・あ、ご、ごめん、なさい、かすみさん」
さすがは鶴の一声、乱馬はたちまちシュンとなってしまった。そうなるとさっそく
ユニコーンは乱馬にすり寄ってくる、もう乱馬はしぶしぶ、されるがままになるし
かなかった。
「・・・ちぇっ」
「ちぇじゃないでしょ〜、乱馬く〜ん! 早く何とかしておくれよ〜!」
もう早雲は泣き顔である。玄馬はすでに人間ナマケモノになり切って風景の一部と
化していたりしたが。
「しょーがないわね」
あかねがフ〜ッとため息をついた。
「とにかくあんた、そのユニコーン連れて外うろついてらっしゃい。その間にあた
したちで何とか対策考えるから」
「へいへい、言われなくても・・・ったく、おめーのせいだってのにニコニコしや
がって!」
乱馬はウンザリしたように立ち上がって茶の間を出た。後ろから尻尾を振り振りつ
いてくるユニコーンへの愚痴が、玄関を開けて閉める音がするまでなぜか聞こえ続
けた。

  2.秘めたる思い
「ユニコーンなぞたわいもないわっ!」
ようやく天井から下りられた早雲と玄馬はなぜか腕を組んで庭を眺めながらドワハ
ハハと笑ってのけた。それを横目でにらみながらあかねも茶の間を出た。
「着替えて来るね、かすみおねーちゃん。ったく、情けない!」
「どーしたの、あかね?」
そこへ、分厚い本を持ってなびきが階段を下りて来た。

「・・・わかった! これだわ!」
縁側で碁に耽る早雲と玄馬をよそに、道着に着替えたあかねと一生懸命本を調べる
なびき、テーブルを拭くかすみはユニコーンの処理に頭を痛めていた。そしていき
なりなびきが叫んだ。
「ユニコーンの弱点?」
「ユニコーンさんの食べ物?」
鉄アレイをフンフン上げ下げしながらあかねが、テーブルをコシコシ拭きながらか
すみがなびきの本をのぞき込んだ。なびきは絶対確かだと言うように本をペシッと
はたきながら言った。
「違うわっ、なぜ乱馬くんに一番なびいていたか、よ!」
「へえ、良かったね、なびきおねーちゃん」
「やっぱり馬さんだからニンジン、かしら、ねえ?」
なびきがあら? あら? と左右に振り向いた時にはすでにあかねもかすみも再び
もとのお仕事に戻ってたりした。ムッとしたなびきはバッと立ち上がって本をググ
イッと突き出した。
「この『世界魔法動物大系・その捕獲と飼育および利用に関する2、3の事柄』の
記述が確かだとしたら大変なことになるのよ!」
「なぜおねーちゃんがそんな本を・・・?」
ジトッと見上げるあかねにかまわずなびきは続けた。
「いーこと!? この本には『ユニコーンがある特定の人物にのみなつく場合は注
意されたし。ユニコーンはその者の秘めたる想いをかなえんと持てる力のすべてを
尽くすゆえ、最後には力つきて消滅せることあり』とあるわ!」
「なんだ、じゃあ、乱馬のその『秘めたる思い』をかなえさせてあげればいーわけ
よね?」
当然のごとく聞き返すあかねにしかしなびきは深刻な表情で首を振った。
「ふ、甘いわね、あかね・・・。なぜ乱馬くんがその『想い』を『秘め』ているの
か! それは、それをかなえることが社会的に許されないことだからよ!」
ズバリ核心を指摘してのけたなびきにあかねとかすみは愕然と身を引いた。
「ま、まさかっ・・・食い逃げっ!? それとも泥棒!?」
「・・・まあ、いずれにしても天道家の恥になることは間違いないわ」
重たげに首を振って見せたなびきは、少し何か考えてから言った。
「だから、あたしたちはユニコーンが乱馬くんの想いをかなえる前に捕まえなきゃ
ならないわけ! 悲劇が起こる前にね!」

「やはり、方向を決めずに歩くと自然にこの町に帰って来ちまうな・・・」
流浪の男、響良牙は今やすっかり見覚えた風景にホッと安堵のため息をついて空を
見上げた。
「あかねさん・・・! 俺の不実な愛ですらここまで強いのに・・・なぜこの想い
が届かん! 答えろ、空よ!」
その空をカラスがアホ〜と鳴きながら飛んで行ったのはおそらく偶然であろうが、
その舌の根も乾かぬうちに雲竜あかりからの手紙を懐から取り出したからには、や
はり良牙はそうなのかもしれない。
「見てはいかん! とわかってはいても、指が動いちまうぜ・・・。でも、あかね
さんならきっとわかってくれるはず、男は、男って奴は、ソッと差し出された優し
い手にはついすがっちまう、本当は弱い生き物だってことを!」
グッと拳を握って涙を流した良牙は決意を込めてバッと手紙を開いた。
「なっ・・・!? み、見えねえっ、涙で文字があああ〜っ!?」
一瞬『警告』めいた予感にゾクッとした良牙は、しかしそれを確かめたい衝動に駆
られてあわてて涙を拭ってバッと顔を戻した。
「う゛!?」
文字が目に入った瞬間、脇からビシュッと突き込まれた長〜い角がその手紙のど真
ん中を貫通していた。
「こっ、こらっ、やめろっつってんだろっ、おめーは!」
そう、それは乱馬が必死に抱き止めているユニコーンの角であった。
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