SIG るーみっくわーるど SIG るーみっくわーるど」は、漫画家 高橋留美子先生(るーみっくわーるど)の作品が好きな仲間が集まっているグループです。 るーみっく好きなメンバー間コミュニケーションのためのチャットや掲示板の提供、るーみっく系イラスト・小説・リンク集の公開などを行っています。 オフ会も不定期に開催されています。1992年6月にPC-VAN上で誕生した歴史あるグループです。
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投稿日時:1994/ 5/29 2:25 投稿者ID:QKM33822
#1655/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QKM33822)  94/ 5/29   2:25  (199)
小説>らんま「UMA」2 altjin
★内容
  3.乙女の祈り
「・・・」
石化する良牙の手の間でたちまち手紙はグリグリ回される角で砂糖の粒のような破
片にまでシュレッドされてしまった。
「わ、わりー、良牙! こいつ、女には優しーのに、男には容赦ねーんだ!」
乱馬の心配は良牙の無事で手一杯で手紙にはまったく気づかず、とにかく必死でユ
ニコーンを良牙から押し離しながら謝った。
「・・・ふ」
太陽に背を向けてブラックアウトした中に目だけが冷たく光る良牙、そのスッと立
てた傘に『南無阿弥陀仏』の文字が浮かび上がったのは影のいたずらか。
「乱馬っ、殺すっ!!」
「なっ、何いきなり暴れてんだよっ、良牙っ!?」
たちまちドピュピュピュと襲う傘突き連打にあわてて飛びよけた乱馬を守るように
ユニコーンがバッと前に出た。
「見損なったぞっ、乱馬っ! いたいけな動物を調教してまで俺を不幸にしたいと
はなっ!」
しかし、良牙の放つ傘突きはことごとくユニコーンの角に受け流されてしまった。
「しっ、知らねーよっ! こいつが勝手に暴れてんだっ!」
一応ユニコーンに守られながら、乱馬は自分に非がないことを一生懸命訴えた。打
ち出す傘突きをことごとく防がれて、フウフウ肩で息をしていた良牙はやがてフッ
と笑って身を翻した。
「わかった。もう貴様の顔なんぞ見たくねえ。また旅に出るぜ、俺は」
「りょ、良牙・・・」
愕然と見つめる乱馬を背に良牙は振り返りもせずにスタスタ歩き出した。その時、
不意にユニコーンがダッと飛び出して良牙の前に回り込むと、角で威嚇するように
良牙の足を止めたのだった。
「なっ・・・?」

「早く乱馬くんを捜さなきゃっ! ・・・て、すぐにわかるわね、これは」
会長が庭に残していってくれた檻をあかねたちはリヤカーに乗せ、門の外へと出し
ながら焦って一足早く飛び出したなびきは呆然と彼方へ続く道を見つめた。はるか
向こうまで、男たちが点々と倒れていたのである。
「とにかく急ぎましょ! さあ、おねーちゃんたちも早く後ろに乗って!」
あかねがリヤカーの前に自転車をつないで飛び乗ろうとしたその時、不意にかすみ
が悲愴な声で止めた。
「待って! ダメよ、あかね!」
「ど、どーかしたのっ、かすみおねーちゃん!?」
あわてて駆け寄るあかねたちにかすみは涙にうるんだ瞳で哀願した。
「お願い! あたしに漕がせて! ちり紙交換屋さんになってリヤカー引くのがあ
たしの幼い頃からの夢だったの!」
「あらあらあらあらあら」
たちまちあかねとなびきはヘナヘナと力が抜けてしまった。
「・・・どーする〜、なびきおね〜ちゃ〜ん?」
あかねは困った顔でなびきを見つめた。他の人ならいざ知らず、かすみがこのよう
に頼むのは非常に珍しいことなのである。
「ん〜・・・」
さらに瞳をウルウルさせて祈るようにジイッと見つめるかすみを眺めながら、なび
きはため息混じりに首を振った。
「・・・ま、乱馬くんの行き先は急がなくてもわかるわけだし・・・いっかぁ、別
にぃ。ね、あかね?」
「・・・まぁ、あたしは別にいーけどぉ〜・・・」
それを聞いて大喜びで自転車にいそいそと乗るかすみを眺めながら、あかねとなび
きはフ〜ッとため息をついてリヤカーの方に乗ったのだった。

「・・・一体何なんだ、こいつはっ!」
さて、ユニコーンと乱馬を前に、ズタボロの有り様で良牙はデンと座っていた。逃
げ出そうとするたびにユニコーンに突き飛ばされるわ蹴られるわで、さすがの良牙
も疲れ果ててしまっていたのだ。
「ユニコーンってゆー名前らしーけど、俺も詳しくは・・・」
「んなこたあわーっとる!」
ボケッと答える乱馬に良牙はガッと怒鳴ったが、すぐにユニコーンにツンツンされ
てウッと座り直した。
「と・・・とにかく、俺が聞きてえのは、何で俺がこいつに監視されなきゃなんね
えのか、ってえことだ!」
「あの・・・良牙?」
結局乱馬はどうしてもそれしか思いつかず、それでおそるおそる聞いてみた。
「おめー、もしかして・・・本当は女の子?」
「・・・見てわからんのか、貴様は?」
良牙はウンザリした様に横目でジトッと乱馬をにらみ上げた。
「・・・だよなあ。どー見てもなついてるよーには見えねーし・・・」
もはやそれまで、乱馬はただただ首を傾げる他なかった。
「だああっ!?」
その時、それまで乱馬と良牙を守るように周りを歩いていたユニコーンがダッと駆
け出した。たちまち、通りかかった男がドゲンと跳ね飛ばされてしまった。タラッ
と汗を流してそれを眺めながら乱馬がアハハと力なく笑って言った。
「まあ、こんな道の往来じゃなんだから、あ、空き地でも行こーか、な、良牙?」

「うふふふ」
一方、何とも嬉しそうなかすみはともかく、あかねとなびきはなお累々と続く気絶
した男たちを眺めながら、他に考えることもないので『乱馬の秘めたる思い』とは
何なのかなどを考えたりしていた。
「・・・乱馬、わざと襲わせてんじゃないかしら?」
不意にあかねがボソッと言った。なびきはギクッと振り向いた。
「な、何でよ・・・?」
「だってほら、乱馬、一番強い男になりたがってたじゃない? だから・・・」
「ご町内の皆様〜!」
突然かすみの声が近所中に響き渡った。ギョッとあかねたちが振り向くと、どこに
隠していたのか、拡声器を手にかすみが朗々とアナウンスを始めていた。
「ちょ、ちょっと! かすみおねーちゃん!」
「毎度のお馴染みの〜ちり〜紙〜交〜換〜、のマネでございま〜す!」
恥ずかしさに顔中真っ赤にしてあわてて止めようとしたあかねはその妙なアナウン
スに思わずズッコけてリヤカーから落ちそうになってしまった。
「かすみおねーちゃん! そこで一発名曲『おとうさん』お願い!」
あわててあかねの帯をつかんで止めながらなびきが実にうまいフォローを入れた。
さっそくかすみは嬉々とした表情で歌に熱中し始めたのだった。
「・・・まだちょっと恥ずかしいわ、あたし」
一応早雲のパートの相づちを入れながらも、あかねはムスッとした顔でリヤカーに
隠れるように座り込んだ。なびきもさすがに同じ様に隠れながら、腕を組んでウ〜
ンと考え込んだ。
「・・・次の歌何がいーかしら、ね?」

  4.秘めたる想い
「・・・何で俺が貴様とこんなとこで茶を飲まねばならんのだ?」
空き地に着いた乱馬たちはしばらく風景を眺めながらボ〜ッと座り込んでいた。や
がて、リュックから水筒の茶を取り出し、乱馬にもカップを渡してズズッと飲んで
いた良牙がブス〜ッと不満一杯の顔でつぶやいた。
「・・・それが風流ってもんだろ、良牙?」
乱馬は目を閉じて、このそよ風の響きを味わえ! と言うような顔で答えた。
「ほお・・・」
その落ち着いた態度にいくらか感心したのか、良牙も、まあ、今は他にすることも
ないし、と目を閉じてみた。
「!」
そこへ突如、あかねの拡声器でもうヤケクソ一杯に歌う『やさしい、いい娘になれ
ない』の、しかもバカ連発の部分が遠くから聞こえてきた。
「・・・バカはおめーじゃねーのかぁ、あかね・・・」
タラッと汗を流してデ〜と凍りつく乱馬の言葉にすかさず良牙の耳がピクッと動い
た。
「・・・あかねさんは、きっと貴様を捜すためにわざと歌っているに違いねえ。そ
んな深い意図も汲み取れねえ貴様こそがバカだと言うこと、どうやら俺が貴様の体
に教え込むしかねえようだな、乱馬?」
「あんたいっぺん死んでこいっ・・・あっ!? いたわっ、バ、あ、いえ、らっ、
乱馬がっ!!」
空き地の端まで来たあかねが拡声器だと言うことも忘れて大声で怒鳴ったので、立
ち上がろうとした良牙はその大音量をまともに浴びてふっ飛ばされてしまった。

「乱馬っ! 大変なのっ、聞いてっ!!」
急いでかすみと自転車を交代して空き地の中に乗り込んだあかねは自転車から飛び
降りるのももどかしげに言った。
「それはいーからいーかげん拡声器は止めろ、あかね!」
キ〜ンと耳にしみる大音量を我慢しながら乱馬は立ち上がってあかねを迎えた。添
い並ぶユニコーンのとなりに良牙もようようにして立ち上がった。
「あっ、ごっ、ごめ・・・ごめんねっ、乱馬っ!」
ハッと気づいたあかねはあわてて拡声器のスイッチを切ったが、しかしあわててい
るためかなお拡声器をマイクのようにしながら言った。
「大変なのっ、聞いてっ、乱馬っ!」
「あたしが説明するわ!」
そこへとなりへ駆けつけたなびきがあかねの拡声器をバッと奪い取った。
「いーこと、乱馬くん!? そのユニコーンは、あんたの『秘めた想い』をかなえ
るためにあんたに特別なびいているのよっ!」
「なっ・・・!?」
乱馬はそれだけで、なぜ良牙が巻き込まれてしまったのかにようやく気づいた。一
方かすみも、なぜかユニコーンのそばにいる良牙にハッと気づいた。
「りょ、良牙くん・・・! あなた、女の子だったのっ!?」
「違うわっ、かすみおねーちゃん! とにかく、この場はあたしに任せて!」
なびきは真剣な表情でかすみを無理矢理黙らせた。
「乱馬くん! あんただって、その『秘めた想い』をみんなに知られたくはないで
しょっ!」
「で、でも、どーすれば・・・?」
乱馬はもう完全に取り乱して、凍りついたように固く前を向き続けながらボッと燃
えそうな顔を冷や汗で抑えるばかりだった。
「・・・捕まえるしかないわ!」
なびきもまさか、すでにもうここまで駒が揃っているとは思わなかったのだ。

「り・・・良牙っ!!」
乱馬は今すぐにでも『想い』がバレてしまうのではないかという恐れを振り払うよ
うに、一気にバッと振り向いて怒鳴った。
「2人で挟み討ちだっ!」
良牙も指をバキバキ鳴らしながら力強くうなずき返した。
「おうっ! この状況から解放されるならなんだってするぜ、俺は!!」
「・・・え? あ、い、いや、よしっ、行くぜえっ!!」
すかさず乱馬たちはバッとユニコーンに飛びかかった。しかしユニコーンはキラリ
と目を輝かせながらスッと紙一重でよける、そうしたやり取りが何度も繰り返され
たが、やがてユニコーンが足を痛めたかのように体をよろめかせた。
「今だっ、良牙っ・・・でええっ!?」
ところが、乱馬たちが飛びかかった瞬間、突然ユニコーンはバッと真上高くにジャ
ンプした。勢い余って倒れた乱馬の上に同じく良牙も倒れ込んでしまった。
「・・・!」
その時、あたかもそれを見届けるかのように、ユニコーンは優しく微笑んでスッと
消えてしまったのである。

  エピローグ
「ユ、ユニコーンが・・・乱馬が良牙くんに押し倒されたら・・・消えた!!」
あかねが凍りついたように愕然と目を見開いてうわごとのようにつぶやいた。
「あら、乱馬くんが良牙くんを抱き倒したんじゃないかしら?」
かすみはともかく、なびきはやっぱり! という顔で蒼然と凍りつく乱馬を見つめ
た。そしてそれから、ハッと心配そうにあかねに振り向いた。
「・・・あかね」
「・・・どうして!? なんで言ってくれなかったの、乱馬!!」
あかねは突然光を失った者のように目を見開いたまま、ヨロッと前に一歩踏み出し
て崩れるようにひざまずいた。
「そんな、そんなっ・・・!? 乱馬が、そんなにまで良牙くんと・・・!」
乱馬はヒクッと引きつり、なびきは一巻の終わりと手を当てた頭を力なく振った。
あかねは涙ぐむ目をギュッと閉じ、両耳に手を当ててもう何も信じられない! と
言わんばかりに首を振った。
「良牙くんとお相撲を取りたかったなんてっ!!」
たちまち乱馬はあれ? と目を点にし、なびきはあらららとズッコけかけてしまっ
た。
「な、何なの・・・、その過激すぎるリアクションは・・・?」
「ま、そーゆーことだ、あかね」
乱馬はどすこ〜いと良牙を突き飛ばすと、サッとしゃがみ直して手刀をチョンチョ
ンチョンと3方に入れた。
「俺も相撲はちょっと自信ねーからな、完璧に仕上がるまで秘密にしときたかった
んだ、黙ってたことは謝る!」
「あら、それじゃあ、さっそくうちにも土俵作らなきゃ、ね?」
かすみの言葉に笑う者は誰もいなかった。あかねは呆然と見上げ、なびきと乱馬は
デ〜という顔で見つめるだけで、かすみは人差し指をピッと上げてニッコリ微笑ん
だままタラッと汗を流したのだった。

【 UMA 】終わる
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