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投稿日時:1994/ 7/ 2 18:41 投稿者ID:QKM33822
#1739/3141 るーみっく☆わーるど
★タイトル (QKM33822)  94/ 7/ 2  18:41  (117)
小説>らんま「ナルキッソスの鏡」1 altjin
★内容
【 ナルキッソスの鏡 】              小説 ”らんま1/2”

                                                  ID:QKM33822 altjin

  プロローグ
「ひいばあちゃん、何あるか、この包みは?」
急に興味が湧いて家系図を探そうと押し入れの中に首を突っ込んでいたシャンプー
は、古びた絹の袋を引っぱり出した。
「・・・はて? 何じゃったかのう?」
「・・・わあ! とても綺麗な鏡ある!」
手を組んでウ〜ンと思い出そうとするコロンに、シャンプーは見た方が早いとばか
りに袋の中に手を突っ込んで中のものを取り出した。それは2枚の丸い鏡−−1枚
の裏には道化の、もう1枚の裏には騎士のレリーフが彫られている−−だった。そ
の騎士を見た途端、コロンはそれが何であるかを思い出してあわてて怒鳴った。
「見てはならぬ! すぐにしまって封印しておくのじゃ、シャン・・・!」
「いらぬならわしがもらうぞ〜い!」
それはまさに早業だった。いや、あまりに見事なタイミングだったと言うべきか。
スキップするように部屋へ飛び込んできた八宝斉がバウンドして窓から外へ飛び出
した時にはシャンプーの持っていた鏡はすでに道化の1枚だけになっていたのだ。
ハッと我に返ったコロンはあわてて叫んだ。
「お、追うのじゃ、シャンプー! あの災いを世に出してはならぬ! 必ずや取り
返してまいれ!」
「りょ、了解ねっ、ひいばあちゃん!」
コロンのあまりに切迫した様子にシャンプーもあわてて八宝斉を追って窓から飛び
出した。その背に投げつけるようにあわててコロンは言い足した。
「おぬしも絶対にあの鏡に見入ってはならぬぞ! 取り返したらすぐに懐に入れて
そのまま持ち帰るのじゃ!」

  1.道化と騎士の鏡
「乱馬〜!」
あかねは風呂場からトレーナー姿で、タオルで髪を拭きながら縁側まで出て来た。
一汗かいてシャワーを浴びたのだった。
「かすみおねーちゃん、乱馬知らない?」
庭を右に左に見ていたあかねはタオルを肩にかけながら振り向いた。
「シャワー空いたんだけど。どっか行っちゃった?」
「さあ・・・屋根の上で服乾かしてるんじゃないかしら?」
かすみの答えに、今1度あかねは縁側から、今度は身を乗り出すように屋根の上へ
向けて呼びかけた。
「乱馬〜! シャワー空いたよ〜!」
「あっかねちゅわん!」
そこへ唐突に八宝斉が飛び込んできたので、あかねは思わず足蹴りで受け止めてし
まった。
「い、いきなりなあに、おじいさん?」
「まあよいまあよい。プレゼントじゃ!」
しかし、八宝斉はまったく意に介さず嬉しげにニコニコ笑いながら懐から取り出し
た鏡をあかねに手渡した。
「あら・・・鏡? 古びた感じだけど・・・綺麗ね」
表の蓋には一角獣のレリーフが彫り込んであった。表に裏に返し見ながらあかねは
我ながら意外にポ〜ッと見とれてしまった。八宝斉はいかにも嬉しげにウンウンう
なずいて見せた。
「そうじゃろそうじゃろ。美人のあかねちゃんにピッタリの良い鏡じゃ」
「鏡見ててめーの顔よく考えろ、ってことだよ」
不意に、屋根の上から身を乗り出すようにらんまが見下ろした。
「いきなり鏡贈ったら女はそーゆー意味に取るぜ、じじい?」
「なっ、何を言うっ、乱馬! わ、わしはただ、こんな綺麗な鏡は・・・」
うろたえながら必死に弁明する八宝斉にあかねはニッコリ微笑んで見せた。
「わかってるわ、おじいさん。乱馬、きっと自分に先にプレゼントして欲しかった
のよ」
「バッ・・・誰がじじーのプレゼントなんか欲しがるかよっ!」
らんまはムカッとあかねを見下ろした。あかねは少し意地悪げにエヘヘ〜と笑って
見せた。
「ありがたくもらっておくわ、おじいさん! でも、今度は乱馬に、ね?」
「やめとけよっ、あかね! どーなっても知んねーぞっ!」
見せつけるように八宝斉の頭を撫でるあかねにらんまはウンザリしたように言った
だけだった。あかねはルンと楽しげに鏡の蓋をパカッと開けた。

「・・・!」
あかねは驚きの表情でジイッと鏡を見つめるばかりだった。うさんくさげにその様
子を見下ろしていたらんまは、数秒ならともかく1分ほど経ってもまだ無言で鏡を
見つめ続けるあかねに、ようやくハッと声をかけた。
「どーした、あかね? 鏡が割れたか?」
「・・・あたしって・・・綺麗!!」
蓋をパカッと閉じながらあかねはウットリと宙を見つめるようにつぶやいた。
「いえ! 綺麗、なんかじゃとても表現できない! ・・・そう、宇宙史上最初で
最後の唯一の金字塔的絶世のスーパーウルトラゴールデンデリシャスハイマックス
ポテンシャルブリベリババーンな美女だわっ!」
「な・・・何なんだ、そのブリベリババーンってのは・・・?」
飛び降りてから呆れてにらむらんまに気づいたあかねは鼻でフッと笑った。
「それに比べれば月とタワシね、あんたって」
らんまのこめかみに青筋がプツッと浮き出た。らんまはワナワナ震える腕を、拳を
握ってかろうじて抑えながらうめいた。
「タ・・・タワシだあ〜? スッポンならまだしも、タワシだあ〜・・・?」
「あ〜ら? じゃあ、太陽とゾウリムシの方がいい?」
「・・・!」
勝ち誇るように見下すあかねを涙すら浮かべてキッとにらみ上げたらんまはあかね
を突き飛ばさん勢いで縁側へバッと飛び上がると、そのまま自分の部屋へダッと駆
け込んで行った。

「あかね・・・」
心配そうに声をかけたかすみに振り向いたあかねはすまなそうに微笑んで見せた。
「ごめんね、かすみおねーちゃん・・・。こんな美しい妹を持って、今までどれほ
ど悔しかったか・・・でも、許してね? こればかりは神様の思し召しですもの、
ね?」
「・・・」
さすがのかすみのこめかみにも青筋がプッと浮き出たが、それでもいつものスマイ
ルは崩さなかった。
「あたし、おねーちゃんの前では出来る限り顔を隠すようにするわ! ああ、でも
輝きあふれる美しさだけでもおねーちゃんにはつらいわよね、きっと。あたしって
何て罪深い女なの! 神様、でもあたし、この十字架を背負って生きるわ! あた
しにしか背負えないのだから!」
「あかねっ!!」
その声にあかねが振り向くと、そこにはこれまででもっとも美しく着飾りもっとも
丁寧にお化粧したらんまが立っていた。さすがの八宝斉も飛びつくのを忘れてウッ
トリ見惚れてしまうほどに美しかった。
「これでど〜だあ〜! もうタワシなんて言わせねーぞっ!」
「・・・ふっ。ふほほほほほっ!」
あかねはいかにもお嬢さん風情でコロコロと笑って見せた。
「バカね、乱馬! 真の美しさは質素な服とお化粧してない顔にこそあるのよ!
偽りの美しさに自惚れるなんて、それこそ自分は本当はタワシだって証明してるよ
うなもんじゃない!」
「ちっ・・・くしょ〜っ!!」
らんまはワナワナと握りつぶしてしまった髪のリボンをベンと床に叩きつけた。
「ここねっ、ひいばあちゃん!」
その時、玄関の方からシャンプーの声が聞こえてきた。ギクッとした八宝斉がコソ
コソ逃げ出すのと入れ替わりにシャンプーとコロンが母屋の横を回って庭へ飛び込
んで来た。
「あかねが見てしまたある、あの鏡を!」
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