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#1807/3141 るーみっく☆わーるど ★タイトル (QEG72756) 94/ 7/26 23:13 (188) 考察>仕返し人形の恐怖!(その1) 飛鳥 杏華 ★内容 今回の「仕返し人形編」ですが、何よりも驚かされたのは、前回の感想でも書い たなびきの台詞です。 >悪口言ったり傷つけたりすると、執念深く覚えていて必ず仕返しするんだって。 言ってしまえば、これは私がここで展開してきた「読者批判論」そのものといっ た感じです。もともと「読者批判論」は、高將治氏の論から影響を受けたものであ り、そういう見方をしている人は私ひとりではないわけですが、その後もずっと書 き続けているのは、私だけかもしれません。 ですから、もうこれだけでも私、飛鳥杏華に対する何らかのメッセージが込めら れていると感じてもおかしくなく、altjinさんは「けもさんからの警告」だ と解釈しました。私もこれは充分にありえることだなと思いましたが、すぐには確 信できませんでした。 恐らく、altjinさんもそうだと思うのですが、最初、なびきの台詞をその まま受け取り、けもさんの読者に対する批判の構図が描かれているものと思いなが ら作品を追っていました。そうなると、仕返し人形(これ以降「ニセあかね」と呼 ぶ)がけもさんとなり、乱馬が批判読者、あるいは私となりますが、それでは本物 のあかね(これ以降「あかね人形」と呼ぶ)の位置づけが見えてきませんでした。 altjinさんは、私の「女らんま退場説」が「らんまイジメ」にあたると考 え、それに対する仕返しに「あかねイジメ」をしてみせたと解釈したようで、これ だとあかね人形はあくまで、あかねというキャラそのものだと考えられます。それ はそれで、納得が行くものだと思います。 しかし、ストーリーを追ってみると、ニセあかねの攻撃は1発も乱馬には命中せ ず、無様な空振りかあかね人形に当たる結果となっています。あかね人形に当たっ たということのみを取れば、altjinさんの言う「あかねイジメ」に相当する と解釈していいと思いますが、それが必ずしもニセあかねの意図したものでなく、 乱馬への攻撃の失敗によるものだということに私は注目しました。 もし、けもさんがニセあかねとして描かれているとしたら、そんな間抜けな描き 方がされるでしょうか? むしろ、ニセあかねの攻撃を意識、無意識に関係なく、 見事にかわしている乱馬の方がけもさんと言えるのではないかと思ったのです。全 くの発想の逆転です。 となれば、ニセあかねは批判読者、あるいは私ということになります。しかしま だ、これだけでは、このニセあかねがどちらかを判定することはできません。冒頭 のなびきの台詞も2通りに取れます。 ニセあかねが批判読者であると考えると、冒頭のなびきの台詞は私の「読者批判 論」を肯定するかたちになり、そのような批判読者が実際に乱馬(けもさん)に襲 いかかって来たんだという事実を提示して、そのためにあかね人形(普通に「らん ま」が好きな読者)が結果として傷つくかたちになったという図式が描かれている ことになります。 一方、ニセあかねが私、飛鳥杏華であるとするとニセあかねの仕返しというのは、 「読者批判論」そのものを表す記号となり、その「読者批判論」を振りかざした私 が、乱馬(けもさん)に対して(考察)勝負を挑んでいるという図式となり、「読 者批判論」の提示によって、あかね人形(普通に「らんま」が好きな読者)が何も 言えなくなり、ダメージを受けてるぞという指摘になっていると解釈することがで きます。 さて、どっちなのでしょう?… ここで、謎をとく鍵となったのが、ニセあかねが帯を巻きつけて振り回した石柱 でした。ここに書かれている文字に注目してください。「右*山…」となっていま す。2文字目は帯に隠れてハッキリとは見えません。しかし、その上部は「なべぶ た」になっています。 部首が「なべぶた」の漢字はいくつもありますが、「らんま」の読者なら「右」 という文字の下にくる「なべぶた」の文字といえばすぐ思い浮かぶでしょう。そう です、「京」…。すなわち、「右京」です。ニセあかねは「右京」を振り回して乱 馬に襲いかかっているんです。 右京と言えば、冒頭、乱馬が人形を壊してしまい、あわてて適当に取り繕った様 というのは、「右京ソース編」の回想シーンとよく似ています。しかも、右京が作 ったソースの瓶には「さわるな」という貼紙がしてあり、仕返し人形の脇にあった 「危険 さわるな」の立て札とも共通点があります。しかも、仕返し人形の頭にあ る白いリボンは、右京のリボンを連想させたります。 さて、なぜいきなり右京の話になってしまったか…。ここPC−VANでの私の 書き込みしか読んでいない方にはさっぱりわからないだろうと思います。なぜ、私 が右京と関係があるのか? それは、今年(1994年)2月発行の「ぺっぱあ」 11号という一刻会の本に私が描いた「久遠の商人」という漫画との関係なのです。 この漫画で私は右京を主人公にし、ほとんど全編に渡って右京のモノローグ形式 でストーリーを展開しました。しかし、それだけでは、右京を振り回して襲いかか っていることにはならないじゃないか、と思われるでしょう。確かに、その作品を 普通に読めば、何のことはない単調でノリの悪い漫画なのですが、私はそこに「読 者批判論」の1部を描き込んだのです。 >そら愛が憎しみに変わったと思ったこともあった… >けど、結局それは置いてきぼりにされたことに腹立てとっただけやったんや。 >乱ちゃんを嫌いになったわけやなかった……。 >あのとき、うち、ほんまにときめいたんや……。 >やっぱり、本気で惚れた相手、 >そんな簡単に嫌いになれるわけない… >愛がいきなり憎しみに変わるやなんて、 >いまのうちには、もう信じられへん この台詞の流れの中に、私は批判読者に対する小さな批判を込めたのです。それ は当然、「読者批判論」を踏まえた上でのささやかなマネごとでした。そして、執 筆者のプロフィールのところにはコソ泥姿の自画像に「気分はちょっと海千拳」と いうひと言を添えています。 これは、「海千拳は、作品の裏側に隠れた意味を込めるけもさんの高度な執筆技 術である」という私の持論を踏まえた上で、そのマネごとをやってますよというこ とを暗示したものでした。 そして、この「ぺっぱあ」に限らず、一刻会の会誌、会報は小学館を通じてけも さんに送られており、ここのLOGに比べれば、はるかに読まれている確率は高い と言えるのです。 この裏の意味が見えたとすれば(けもさんなら、簡単に読み取られたことでしょ う)、右京を「読者批判論」の道具として振り回して勝負を挑んできているのだと いう見方も充分に成立すると言えるでしょう。 ちなみに、ニセあかねが最初に石柱を振り回したときの「天誅」という言葉は、 私の漫画の中で、勘違いして右京を抱きしめた紅つばさの頭の上に、右京が載せた 焼き立てのお好み焼きにシッカリと書かれているのです。 しかし、記号はそれだけにとどまらなかった。この「ぺっぱあ」に描いた漫画か ら、さらに私は恐るべき記号にたどりついたのです。 それを語る前に、いま1度乱馬が人形を自分なりに直して飾ったシーンに戻って みましょう。乱馬が人形を飾り直したのは合計3回。冒頭とラストは仕返し人形そ のもの、2回目は人形にされたあかねでした。 このうち、仕返し人形そのものを飾ったときには、帯の結び目がうしろ前になっ て胸元にきていましたが、人形にされたあかねのときは帯の結び目は正しくなって いました。これは、「仕返し人形のときは、その直前に帯がとけていたから」とい うフォローがなされているのですが、乱馬は最初に直して飾ったとき、うしろ前の 帯に対して「よしっ」と言っています。 乱馬が感覚として帯の結び目が前にあるのが正しいと思い込んでいたとすれば、 人形にされたあかねのときも、帯を直す可能性はあったと言えます。とすれば、乱 馬(けもさん)が仕返し人形の場合は帯がうしろ前で「よしっ」とする何かがあっ たと見ることもできるのです。 浴衣姿で前に帯の結び目…。この人形の姿を見るかぎりでは、実に滑稽で乱馬の いい加減さを表したギャグだと言えるでしょう。しかし、もしこんな服装のキャラ がいたとしたら…。いたのです。浴衣姿(寝巻きですが)で胸元に帯の結び目…。 ・・ そのキャラの名は、水乃小路飛鳥です。 「うる星やつら」の「飛鳥ふたたび=その1=」(23巻、ワイド版なら10巻) の冒頭を見てください。「ぺっぱあ」には漫画の前に執筆者からのフリートークが 掲載されるのですが、実は、そこにこの「飛鳥ふたたび=その1=」の冒頭のシー ンのパロディを書いたのです。(その前の「そると」8号の「執筆者よりひと言」 では、自画像と称して水乃小路飛鳥の絵を描いている。) 右京という記号から「ぺっぱあ」の漫画を連想したあと、ふとそのことを思いだ して、この「飛鳥ふたたび=その1=」を見ると、飛麿の布団から「にょ」と出て きた飛鳥は、寝巻きの浴衣姿に帯の結び目は胸の下というスタイルになっているで はありませんか。これにはさすがに震撼しました。 そして、そこに描かれている水乃小路邸は、実に旅館「人形館」と雰囲気が似て いると思いませんか? 水乃小路邸の参考図としてはこれの他に「水乃小路家の娘 =その2=」(22巻、ワイド版なら10巻)がいいでしょう。これを見ると、建 物の側に川があり、その途中になんと灯篭まであるではありませんか。あかね人形 はこれの下敷きにされたと見ることができます。また、ニセあかねが裸になった小 高い草っ原に相当する小山もあります。 そして、ニセあかねが裸をさらしたのは、「飛鳥ふたたび=その1=」冒頭で、 いきなり裸で飛麿のつかっている湯殿に飛び込んできた飛鳥に相当すると見ていい でしょう。この記号が結びつけば、人形の浴衣の柄である「ひまわり」もラムが対 飛鳥用に、飛麿を強化するために使った植物兵器と結びつけることが可能です。 さらに、冒頭、人形の脇にさり気なく置いてあったほおずきは、「鬼灯」という 字をあてることもあります。「鬼」…。すなわち、飛鳥を表すヒントとしての「う る星」の記号です。 さらにさらに、人形館はさきほど水乃小路邸に似ていると書きましたが、記号と してもうひとつの意味にも取れます。木造で古い。これだけで何のことかわかりま すね。しかも、乱馬がタオルを「ぱん」と広げている図から、この階がこの建物の 最上階であることがわかり、その乱馬を突き落とそうとして窓から落ちたニセあか ねに対して、なびきが「2階から落ちるなんて…」と言っていることから、この建 物は2階建てであることがわかります。木造2階建てで古いとくれば一刻館です。 しかも、その2階から落ちたと言えば五代くんですね。これは「めぞん」の記号で す。 これは、私が以前「わたしが背負っているとすれば『めぞん』だ」という発言を 書いたことがありますし、一刻会との関係からの記号と見ることもできます。 これだけ記号がそろってしまうと、少なくとも今回の「仕返し人形編」は私、飛 鳥杏華とその「読者批判論」に対するものである可能性がかなり高いと言わざるを えなくなってくるのです。 (その2につづく) QEG72756 飛鳥 杏華