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#1901/3141 るーみっく☆わーるど ★タイトル (YUD09175) 94/ 9/14 6:53 ( 95) 感想>RE#1822,1851 LTFの構造 マッシャ・アッキーニ ★内容 《Kimさん,阿修羅さん》 遅くなりましたが、「ラム・ザ・フォーエバー」についてのRESです。 > 素直に見ようとすると殆ど意味不明…(^^;)。 という阿修羅さんに対して、Kimさんは > この作品は、ストーリーを追ったり深い考察を加えるというよりは、雰囲気 > を楽しむ作品なのではないかと。 と答えられました。ある作品を理解しようとして、それでも得られるものが少な かった場合、これは確かに、作品と接する方法のうち最も有効なものの一つとい えるでしょう。「意味不明」であることを理由に作品を嫌うよりはよほど賢いで す。でもそこで、その作品に深い意味は込められていないというように思い込ん でしまっては、実にもったいないと思います。 とはいえ、LTFを観た後、頭上に「?」マークの花が咲くのも無理はないと 思いますし(私も最初はそうだったのでよく分かります)、多くのファンをして 「失敗作」と言わしめたことも事実です。監督自ら「戦略的にミス」だったとい う発言もされています(やまざきかずお監督の発言は、「動画少年9」のインタ ビューを参照しました。以下同様)。 ではやはりLTFはそれだけの作品だったのか? そうではないと思います。 > この作品の不可思議な世界は、確固とした基盤のない不安定さによるのではな > いかと。 これには頷けるのですが、「確固とした基盤」「不安定」などに対する意味付 けがKimさんと私とでは幾分異なっているようです。ここで、「確固とした基 盤」に相当するのは、「筋の通ったストーリー」などだと推察され、もしそうで あるなら、ここまでは私も同意見です(「不安定」も含めて)。がしかし、「確 固とした基盤」が全く存在し得ないかとなると話は違います。また、監督による と、かなり仕掛けた部分もあるそうですし、それが氏の満足いくものでないにせ よ、全然残っていないはずがありません(どんな作品でも、ある程度いえること だと思います)。ではそれは何なのか? 一見意味ありげなシーンの連なり。漫然と観ていただけでは、これらが何を意 味しているのやら、さっぱりでしょうが、実は同じような意味の構図の繰り返し であると見ることができるのです。来たるべき「終末」の予兆…そして崩壊と再 生。なぜ「太郎桜」は春までの生命だったのか? 壊れたテレビの群が映したラ ムの像は?(「町」の記憶?) 「だってウチらもう17だっちゃ」…ここで時 間の経過を確認したのはなぜか? ラムの能力が消失したのは? 友引町を支え ていたものは何だったか? 「町が見る夢」とは? 何のために再生は行なわれ たのか? この映画の公開された時期を考えれば、これらの意味は理解できるでしょう。 人により誤差はあるでしょうし、それをどう思うかは鑑賞者次第でしょうが。 おそらくLTFは、観る者の中にある「うる星への想い」を取り込むことによ り、初めて意味を持つタイプの映画です。そういう意味で、阿修羅さんの、 > 僕みたいに熱の冷めた時期にうる星ファンになったもんには、あんまり理解 > できん気が… という発言は興味深いです。世界を凍りつかせ、破壊した後、再生させるという 話を、TVうる星終了とほぼ同時期に作った製作者の意図を想像しながら、もう 一度LTFを観れば、阿修羅さんはどういう感想を持たれるでしょうか? また 意味不明なところがあれば、UPしてくだされば、ヒントくらいは差し上げられ ると思いますよ(私の見方でよろしければ、ですが)。 そういうわけで、「確固とした基盤」は存在し得ます。「基盤」には、鑑賞者 の内面を取り込むことを期待しているであろう部分が相当し、それを取り込むこ とによって、「基盤」は「確固とした」ものになります。「不安定」さは、同じ ように考えて「受け手の創造」の不在によるものといえるでしょう。この場合、 > (その不安定さが意図したものなのか、単なる製作現場のパワー不足によるも > のなのかという突っ込みはナシね(^_^;)) これは、おそらく両方によるものでしょうね。また、監督が「仕掛けようとし た」こととは、「一回卒業しようよ」ということだったそうです(このへんがB Dと通ずるわけです。方法に違いはありましたが)。まぁ、BDの後だけに、サ クラの「新たな地平を目指すはず」云々のセリフがえらく気の毒に思えたりもし ますが…(笑)。 監督の、作る側として、また観る側としての『うる星やつら』に対する「想い」 が形になったものなのですから、 > ただ、あの内容なら、舞台はうる星の世界でなくてもよかったんじゃないかと > は思いますけど。(^_^;) やはり、あれはうる星でなければならなかったと思います。 > ほとんど原作の設定借りた別物なんですねぇ(だから悪いと言う訳ではない > です、当然)。 「別物」なのは当然ですけどね。媒体も作者も違いますから。 監督には伝えたいことが存在しました。しかし、あがってきたシナリオを見て、 やまざき氏は「違う」と思ったそうです。<鬼姫伝説>も<映画作り>も予定に なかったとか。 ただ私としては、<映画作り>に関していえば、結果としてよかったと思って います。自主映画製作がきっかけで、町に異変が起きてしまう。あからさまな構 図といえばそれまでですが、これがあるからこそ、EDの写真が効いてくるわけ です(とくにラストの集合写真)。アニメうる星が何だったのかという見事な自 己言及といえないでしょうか? 事実、私は「思い出だけでも生きて」います。 マッシャ・アッキーニ